改訂新版 世界大百科事典 「クラティノス」の意味・わかりやすい解説
クラティノス
Kratinos
古代ギリシア,アッティカ古喜劇三大作家のひとり。生没年不詳。記録によれば,前453年に,喜劇競演で最初の勝利を得,前423年にアリストファネスの《雲》を破って得た勝利が最後だとされていることから,アリストファネス,エウポリスより,およそ一世代年長であると考えられる。時代に対する痛烈な批判と,爆発的な笑いというアッティカ古喜劇の特異な性格を創り出したのはこのクラティノスであるとされている。彼の作品に関しては,27のタイトルが知られ,450個の断片が伝わっているに過ぎない。ペロポネソス戦争の開始を市民に説得したペリクレスを攻撃した《ディオニュサレクサンドロス(パリスの役割をつとめるディオニュソス)》が,彼が生き,創作した時代を表すのに,最もふさわしい作品である。
執筆者:安西 真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報