改訂新版 世界大百科事典 「クロトンアルデヒド」の意味・わかりやすい解説
クロトンアルデヒド
crotonaldehyde
不飽和アルデヒドの一つ。化学式CH3CH=CHCHO。刺激臭のある無色の液体。融点-76.6℃,沸点104.0℃。水,有機溶媒に可溶。アセトアルデヒドに塩化水素または塩化亜鉛を加えて加熱すると生ずるアルドールの脱水によって得られる。
この方法で合成したものの二重結合の立体配置はトランス型である。工業的には,アルカリ触媒を用いたアルドール縮合と,酢酸触媒によるアルドールの脱水を組み合わせて製造する。重合しやすいので,ヒドロキノンなどの重合防止剤を加えて保存する。容易に酸化されクロトン酸CH3CH=CHCOOHとなる。二重結合を還元するとn-ブチルアルデヒドが,さらにカルボニル基も還元するとn-ブチルアルコールが生成する。クロトンアルデヒドは,そのほかに食品保存剤として重要なソルビン酸CH3CH=CH-CH=CH-COOH合成の原料となる。
執筆者:奈良坂 紘一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報