日本大百科全書(ニッポニカ) 「グルサール」の意味・わかりやすい解説
グルサール
ぐるさーる
Serge Groussard
(1920―2016)
フランスの小説家。第二次世界大戦に志願兵として出征、ついで抵抗運動に参加して、強制収容所生活を体験。戦後はアルジェリア戦争にも従軍。それらの体験をもとにして『生者たちの黄昏(たそがれ)』Crépuscule des vivants(1945)、『大虐殺(ポグロム)』Pogrom(1948)、『過去のない女』La femme sans passé(1950。フェミナ賞)、『明日はそこにある』Demain est là(1956)、『夜のタクシー』Taxi de nuit(1977)などリアルなタッチの作品を書く。『重要でない人々』Des gens sans importance(1949)は、1955年アンリ・ベルヌイユの監督で映画化され成功した(邦題『ヘッドライト』)。同時に『フィガロ』紙などにルポルタージュを多く書くが、現実の生活を素材そのままに取り出すルポルタージュの表現に災いされて、小説家としての十分な力量を発揮しないまま1970年代後半からはみるべき作品の発表がない。
[小林 茂]
『水野亮訳『過去のない女』(1952・岩波書店)』▽『井上勇訳『明日はそこにある――科学の驚異』(1959・文芸春秋新社)』▽『谷長茂訳『ヘッドライト』(ハヤカワ文庫)』