ポグロム(読み)ぽぐろむ(英語表記)погром/pogrom ロシア語

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ポグロム」の意味・わかりやすい解説

ポグロム
pogrom

組織的な略奪虐殺破壊を意味するロシア語。一般に,19世紀後半~20世紀前半にロシアで起こったユダヤ人に対する集団暴力行為をさす。アレクサンドル2世が暗殺された 1881年のウクライナキシニョフにおけるポグロム最初のものとして知られる。すでに皇帝アレクサンドル3世治下のロシアでは宗務院長 K.P.ポベドノスツェフによって,また皇帝ニコライ2世時代には内相 V.K.プレーベによって極端な反ユダヤ人政策がとられ,国内の不満をそらせる目的から政府奨励黙認のもとに大規模なポグロムがしばしば行われた。さらに日露戦争に敗北してからは反動的な黒百人組などによって「愛国的ポグロム」もなされた。その後この言葉はナチス・ドイツのユダヤ人虐殺にも用いられるようになった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポグロム」の意味・わかりやすい解説

ポグロム
ぽぐろむ
погром/pogrom ロシア語

集団的な略奪、虐殺、破壊行為をさす語で、一般にユダヤ人に対する集団暴力事件をいう。民衆の反ユダヤ感情は近代に入ってもヨーロッパの東西を問わず根強いものがあったが、帝政ロシアでは官憲当局自体が反ユダヤ感情の現れを抑止しないばかりか積極的に利用し、使嗾(しそう)すらしたので、その種の事件は激烈、過酷な形をとった。とくに、皇帝アレクサンドル2世暗殺(1881)の衝撃を直接の契機とする1881~84年の事件と、民衆運動の高揚、第一次ロシア革命(1905)を背景とする1903~06年の事件が、大規模なものとして知られている。また、十月革命後の内戦期に反革命勢力が引き起こしたこともある。ポグロムは中世以来の宗教的偏見土台とし、激化する階級対立のなかでユダヤ人がスケープゴートとされた悲劇であるが、アメリカへのユダヤ移民の顕著な増大、近代シオニズムの成立など、ユダヤ人社会に及ぼした影響も大きい。

[原 暉之]

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