グレイス(読み)ぐれいす(英語表記)Patricia Grace

日本大百科全書(ニッポニカ) 「グレイス」の意味・わかりやすい解説

グレイス
ぐれいす
Patricia Grace
(1937― )

ニュージーランドの先住民マオリの短編小説家、小説家。ウェリントン生まれ。ナーティ・ナーティ・ローカワ部族を祖先にもつ。教育養成校勤務。短編第一作『ワイアラキ』(1975)、マオリの昔の伝説『スカイ・ピープル』(1994)などの短編選集を数冊出版。ステッドChristian Karlson Stead(1932― )編『現代南太平洋短編集』(1994)には、ウェンデ、ヒュームKeri Hulme(1947―2021)、イヒマエラWiti Ihimaera(1944― )らマオリの作家たちとともに作品が収録。小説は1978年『月が眠る』、『ポティキ』(1986)、『いとこたち』(1993)、そして『両眼のない赤ん坊』(1999)など。児童書は1982年に、互いに機織(はたお)りを競う『老マオリ婦人とくも』が、1984年には、『ウォータークレス・ツーナとチャンピオン通りの子供たち』が出版されたが、1980年代は、マオリ語の話し方あるいは話し方の学習を奨励した。マオリ語と英語で書かれた『風の通り道』(1994)などとともに、これら児童書には少数民族の子供たちへの民族としての自己認識多文化主義促進というメッセージがある。ちなみに『ポティキ』は複数の人物が、それぞれの立場で得た経験・認識を語ることで、全貌(ぜんぼう)が読めてくるもので、物質主義、消費社会、植民地社会を批判する。同時に、マラエにかわる新しい集会所を拠点に、伝統的なマオリ文化を新たに現代社会に適合させていこうとする、マオリ文化のテーマをもった小説である。

[古宇田敦子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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