日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケラマウミヘビ」の意味・わかりやすい解説
ケラマウミヘビ
けらまうみへび / 慶良間海蛇
Kerama snake eel
[学] Apterichtus keramanus
硬骨魚綱ウナギ目ウミヘビ科に属する海水魚。沖縄県慶良間列島南部からとれた1個体に基づいて、1997年(平成9)に日本の魚類研究者の町田吉彦(よしひこ)、橋本博明(ひろあき)、山川武(たけし)によって新種として記載された。本標本の全長は約28センチメートル。水深25~50メートルの沿岸のサンゴ砂で覆われた海底にすみ、底引網でとられた。体はほとんど円筒形で細長く、後方に向かって細くなり、尾端でとがる。頭部は小さく、全長のおよそ10%。肛門(こうもん)は体のほぼ中央部に位置する。鰓孔(さいこう)は眼径よりわずかに大きく、腹面に開く。吻端(ふんたん)はとがり、側隆起はよく発達する。吻の下面は平たく、溝があり、前鼻孔(ぜんびこう)の基部を越えて前方へ伸びる。溝の後部と口唇弁の近くの口の周りに短い肉質の突起物がある。目は小さく、長円形。前鼻孔は管状で、吻の下面に後方を向いて開口する。後鼻孔は口唇弁の直後の口の内側に開く。口は大きく、吻の下面に開き、下顎(かがく)は上顎に含まれる。上顎の前端にある歯は口を閉じたときに露出する。眼上の感覚管は5個で、第1番目は吻の下面の前鼻孔の前に、5番目は目の中央部の直上にある。すべての側線孔は側線溝の下に開口する。上下両顎の前端に4個の大きな円錐歯(えんすいし)がある。主上顎骨と下顎の歯は円錐状で1列に並び、先端が後方に曲がる。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)に7本の円錐歯が1列に並ぶ。体は一様に淡黄色で、背方がすこし暗色。目の前下縁から上唇に向かって暗色の狭い帯状斑(はん)が伸びる。前鼻孔の先端の内側と外側は黒い。ほとんどの頭部感覚管と前2個の側線孔の縁辺は暗色。腹膜は淡色。本種の所属について疑問をもつ研究者もいる。
[尼岡邦夫 2019年6月18日]