翻訳|caving
洞窟探検と訳され,洞窟の探検や学術調査などの諸行動を意味するが,元来は鉱山の採掘法を表すことばとして用いられていた。同義語としてspelunkingやpotholingもまれに使われている。最近,ケービングは探検の比重が増してスポーツ化し,学術調査は〈洞窟学speleology〉にゆだねられている。なお,ケービングする人をケーバーと呼んでいる。
ケービングは,洞窟(鍾乳洞,溶岩洞,氷河洞など)という限られた空間で,しかも暗やみで行動するスポーツであるため,身体保護のための着衣(つなぎ服がよい)やヘルメットなどの装備を必要とするが,特別のケービング技術はない。ほふく前進,懸垂下降といった技術やラダー(ワイヤばしご)の使用など,ロッククライミングの地底での応用である。また,地底湖などでは,ダイビングの技術・装備も必要となる。さらに完全な照明用具(ヘッドランプやサーチライト)の準備と,洞内状況の把握のための測図づくりは欠かせず,簡易測量の知識も必要とされる。また,鍾乳石や棲息生物,地下水など,洞窟の自然を保存,保護することはケーバーの鉄則である。
組織化,目的化された探検としてのケービングが始まったのは19世紀半ば以降であるが,その確立は20世紀に入ってからのことであり,世界的なケービング組織であるアメリカ合衆国のNational Speleological Societyは1941年に設立されている。日本におけるケービングの普及・発展は50年代からで,上野益三や山内浩らによる洞窟地下水研究会や四国ケービングクラブなどの組織活動のほか,ケービングの百科事典ともいえる《British Caving》(1953)の影響が大きい。現在,日本のケービング人口は1000人に満たないが,日本ケイビング協会(1959設立),日本洞窟学会(1975設立),日本洞窟協会(1978設立)を中心として活動が続けられ,新洞窟の発見や海外への調査・探検活動も活発に行われている。1996年1月にこれら3組織と火山洞窟学協会は統合され,新しい日本洞窟学会が誕生した。
執筆者:伊藤田 直史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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