ゲル紡糸(読み)ゲルボウシ

化学辞典 第2版 「ゲル紡糸」の解説

ゲル紡糸
ゲルボウシ
gel spinning

ゲル状の物質から繊維を製造する方法.柔軟な高分子において,分子量が数十万以上(超高分子量)になると,高分子鎖はからみあいがいちじるしくなり,流動特性が失われてゴム状になり,溶媒に溶かしてもゲル状になり,えい糸性が悪くなる.このようなゲル状物質の溶液濃度を変化させてからみあい濃度を調整し,からみあい点間の分子鎖を極度に引き伸ばす(超延伸)ことで,高分子鎖が超配向した超高強度繊維が得られる.この方法はオランダDSMで開発された.たとえば,一般にポリエチレン(PE)のフィルム(スーパーマーケットなどの買い物袋)は容易に引き伸ばされ,切断しやすい.これは,PEの分子鎖の間で分子鎖がすべって変形してしまう結果である.この分子間のすべりを抑制し,分子鎖方向(共有結合)で変形する材料を作成することにより,金属に匹敵する強度をもったPE繊維が得られ,現在,実用化されている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゲル紡糸」の意味・わかりやすい解説

ゲル紡糸
ゲルぼうし

ゲル延伸ともいう。高分子量のポリエチレンなどを高温で溶媒中に溶かし,その溶液から紡糸急冷などによってゼリー状に固まったゲル状物質をつくったあと,高倍率に延伸して高強度,高弾性率の材料を得る加工法。溶液中で高分子の鎖のからみ合いを減らしてゲル化させるため,数百倍の延伸が可能となる。その際分子の鎖は延伸方向に引延ばされて結晶化し,欠陥も少いため,高レベルの力学物性をもった物質となる。ケーブルロープ,セール類のほか,複合材料補強用繊維としてヘルメットなどにも応用されている。

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