紡糸(読み)ボウシ(英語表記)spinning

翻訳|spinning

デジタル大辞泉 「紡糸」の意味・読み・例文・類語

ぼう‐し〔バウ‐〕【紡糸】

糸をつむぐこと。また、その糸。

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精選版 日本国語大辞典 「紡糸」の意味・読み・例文・類語

ぼう‐しバウ‥【紡糸】

  1. 〘 名詞 〙 糸をつむぐこと。また、つむいだ糸。紡績。
    1. [初出の実例]「紡糸機器(〈注〉イトヲヨルシカケ)を創造し」(出典:西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉一)
    2. [その他の文献]〔蘇州府志〕

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改訂新版 世界大百科事典 「紡糸」の意味・わかりやすい解説

紡糸 (ぼうし)
spinning

高分子物質から細い糸状の繊維をつくること。綿,羊毛,麻などの短い繊維を平行に並べて撚り(より)をかけて糸を作ることは紡績という。紡糸法には,溶融紡糸melt spinning,湿式紡糸wet spinningおよび乾式紡糸dry spinningがある。ここでは湿式紡糸と乾式紡糸について述べるが,合成高分子に多用される溶融紡糸については,その項目を参照されたい。

 湿式紡糸の代表例はビスコースレーヨンである。ビスコースは紡糸口金から酸浴の中へ押し出されて,濃液状態だったものが糸状のセルロースに再生される。紡糸溶液がこのように液体の中へ押し出されるとき,湿式紡糸と呼ばれる。ビスコースの場合,セルロースキサントゲン酸ナトリウムの形で溶解していたものが,酸と反応してセルロースになる。また,紡糸後約100%延伸されて強度が増加される。ビスコースの紡糸速度は毎分60~80mと遅く,速い機械でも毎分140~150mである。ある種のモダクリル繊維も湿式紡糸で作られる。たとえばジメチルアセトアミドに溶かしたアクリロニトリル共重合体の約20%溶液は,140℃でグリセリン中へ押し出され,ボビンに巻き取られ,水洗後乾燥される。糸はグリセリン浴を通っている間引張りをかけられる。

 乾式紡糸はセルロースアセテートアセテート)繊維の製造に適用されている。アセテートは揮発しやすいアセトンに溶かして紡糸溶液(ドープ)が作られる。ドープは紡糸ジェットから紡糸箱へ押し出されるが,紡糸箱の中には熱い空気が流されており,これがアセトンを揮発させて,アセテートを固化させる。紡糸口金の孔径は直径0.03mmくらいであり,孔の数は目的とする繊維の太さによるわけで,150デニールの糸は2.5デニールのフィラメント60本からできている。200~400m/分の紡糸速度で作られ,巻き取るまでに少し延伸がかけられる。オーロンなどのアクリル繊維は乾式紡糸で作られる。アクリル繊維を10%以下の濃度でジメチルホルムアミドに溶かして紡糸溶液を作り,これをノズルから押し出す。できたばかりのフィラメントに熱い空気,窒素あるいは水蒸気を向流で吹き付けて溶媒を取り去り,フィラメントを固化する。フィラメントは100~250℃で空気中または水中で熱延伸される。
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百科事典マイペディア 「紡糸」の意味・わかりやすい解説

紡糸【ぼうし】

繊維形成能を有する物質(主として鎖状高分子物質)を溶融状態または溶液とし,紡糸口金の細孔を通して糸状にする操作。次の3種に大別。(1)溶融紡糸。高分子物質を溶融し,空気中,ガス中,または適当な液体中に吐出して冷却固化させる紡糸法。ナイロンテトロンなどに利用。(2)乾式紡糸。高分子物質の溶液を加熱空気中に押し出し,溶媒を蒸発させて繊維を得る紡糸法。アセテートレーヨンオーロンなどに利用。(3)湿式紡糸。高分子物質の溶液を適当な液体中に押し出して凝固させる紡糸法。ビスコースレーヨンビニロンなどに利用。紡糸口金の材料は,ビスコースレーヨン用では金‐白金合金,その他ニッケルまたはステンレス鋼など。→紡績
→関連項目再生繊維銅アンモニアレーヨン

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化学辞典 第2版 「紡糸」の解説

紡糸
ボウシ
spinning

高分子物質を溶液や融液にし,細孔(紡糸口金)から押し出し,繊維化する方法.紡糸は大別すると溶融紡糸溶液紡糸(湿式紡糸乾式紡糸)となり,大部分の化学繊維がこのいずれかの方法で製造されている.そのほかにエマルション紡糸コンジュゲート紡糸があり,また口金を用いずに高分子物質を繊維状にする方法も種々考えられている.

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「紡糸」の意味・わかりやすい解説

紡糸
ぼうし

絡み合った繊維を伸ばしてそろえ、これに撚(よ)りを加えて均一な一定の太さの糸にすること、あるいはこのような紡績工程を経てできあがった糸。紡績糸ともいう。綿の場合では、混綿、開綿、打綿、梳綿(そめん)、練篠(れんじょう)、粗紡、精紡を経て糸となる。化学繊維の場合では、原料を紡糸口金の細孔から押し出して凝固させる。これらの紡糸法には多くの種類があり、それぞれ独自の方法がとられている。

[角山幸洋]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「紡糸」の意味・わかりやすい解説

紡糸
ぼうし

高分子物質を繊維状に変えること。化学繊維では多くの場合,高分子物質を溶解あるいは融解し,ノズルから押出し,同時にけん伸を与え,繊維にする。乾式紡糸溶融紡糸湿式紡糸などがある。

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普及版 字通 「紡糸」の読み・字形・画数・意味

【紡糸】ぼうし

糸をつむぐ。

字通「紡」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の紡糸の言及

【板金プレス加工】より

…またカップ状にした後にそれにつばを付ける過程のフランジ成形flanging,カップを押し抜いて,より薄肉の深いカップに成形するしごき加工ironingなども板金プレス成形の一つである。板材またはあらかじめ張出しや深絞りでつくった容器を回転させながら,へらを押し付けてふくらませていく加工法はへら絞りまたはスピニングspinningと呼ばれている。 日用品として多用されている家庭電器の金属製の外殻,金属製の建具などはほとんど板金プレス加工により製造されるといえる。…

【紡績】より

…天然繊維や化学繊維で作られたステープルファイバー(短繊維)など比較的短い繊維の集合体を解きほぐし,連続したひも状のスライバー(撚り(より)をかけない繊維束で,日本では篠(しの)と呼ばれる)を作った後,これを引き伸ばして細くし,撚りをかけて糸を作る一連の作業。昔は真綿その他の繊維塊から指先で繊維を引き出し,これに撚りをかけて糸を作ることを〈紡ぐ〉といい,麻,カラムシ(チョマ)などを細く裂いてつなぎ,撚り合わせることを〈績む(うむ)〉といった。…

【ビスコースレーヨン】より

…(7)熟成 ビスコース溶液は10~18℃で4~5日貯蔵される。熟成の間に粘度がいったん落ち,その後上昇し紡糸に適するようになる。短い熟成時間では紡糸がうまくできない。…

※「紡糸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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