コウモリバエ

改訂新版 世界大百科事典 「コウモリバエ」の意味・わかりやすい解説

コウモリバエ

双翅目コウモリバエ科Streblidaeに属する昆虫総称,またはこのうちの1種を指す。小型のハエで,体長1.5~3mm。この科はクモバエ近縁なグループと考えられているが,複眼の個眼の数が多いこと,よく発達した翅をもつこと,胸部腹部が扁平でないことなど,多くの点でクモバエより一般的な双翅目の特徴をよく保持している。多くはコウモリに外部寄生するが,Ascodipterinae亜科に属するものの雌では,翅も脚も脱落したうじのような形でコウモリの皮下組織に入り込み,内部寄生者のような生活を行う。熱帯から亜熱帯にかけて分布し,その分布の境界は冬の10℃の等温線にほぼ一致するが,ヨーロッパや日本ではさらに数度低いところまで分布している。旧大陸,新大陸にそれぞれ約100種ずつを産する。両大陸のものは非常に古い時代に分化し,それぞれ独立に進化してきたものと考えられている。クモバエと同じく蛹生(ようせい)で,雌は完全に成熟した幼虫を一度に一匹ずつ生み出し,幼虫は直ちに蛹化する。日本からはコウモリバエBrachytarsina amboinensisおよびカノウコウモリバエB.kannoi,雌が無翅のAscodipteron speiserianumの3種が知られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コウモリバエ」の意味・わかりやすい解説

コウモリバエ
こうもりばえ / 蝙蝠蠅
bat flies

昆虫綱双翅(そうし)目短角亜目ハエ群蛹生(ようせい)類のコウモリバエ科Streblidaeの総称、またはそのなかの1種。この科はコウモリ類に寄生して吸血するハエ類で、頭部は小さく、複眼は痕跡(こんせき)的で単眼はない。触角は小さく、触角窩(か)の中に収まる。口吻(こうふん)は短小で、小腮鬚(しょうさいしゅ)は円盤状。胸部は丸く鶏卵状。はねの発達は種類により異なる。脚(あし)はじょうぶで、各腿節(たいせつ)は太い。代表種コウモリバエTrichobius molossusは、体長3~4ミリメートル、翅長2.5~3ミリメートル。体は毛深く、はねとともに一様に黄褐色。腹部は細い。はねは半透明で翅端部は丸みを帯びる。

[伊藤修四郎]


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世界大百科事典(旧版)内のコウモリバエの言及

【ハエ(蠅)】より

…成虫の口器は退化し,幼虫はウマの消化管に寄生するウマバエ科(ウマバエ)など,蛹生群には,おもに鳥類,哺乳類に寄生し吸血するシラミバエ科(シラミバエ(イラスト))。成虫がコウモリに寄生するコウモリバエ科(コウモリバエ)とクモバエ科(クモバエ)などが含まれる。このほか,アフリカには原虫性疾患のトリパノソーマ症を媒介するツェツェバエ科(ツェツェバエ(イラスト))が生息する。…

※「コウモリバエ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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