クモバエ

改訂新版 世界大百科事典 「クモバエ」の意味・わかりやすい解説

クモバエ

双翅目クモバエ科Nycteribiidaeに属する昆虫総称。体長2~5mmの小型のハエであるが,名の示すとおり,翅がまったく退化し,長い脚と非常に小さな頭部,筋肉の退化によって扁平化した胸部,そして全体的に扁平な体つきのため,一見,6本足のクモに見える。複眼も退化する傾向にあり,まったく欠くものもある。成虫コウモリに外部寄生し,雌が幼虫うじ)を生むため一時的に寄主を離れることを除けば,つねにコウモリの体上で血を吸って生活する。雌は,コウモリが生息する洞穴の壁などに完全に成熟した大型の幼虫を一度に1匹ずつ生みつける。生みつけられた幼虫は,そのまま何も摂食することなく蛹化(ようか)する。同様の習性コウモリバエ科,シラミバエ科などにも見られ,この3科をもって双翅目の中の蛹生類という1群として扱うこともある。クモバエは全世界から200種ほどが知られているが,熱帯アフリカや東南アジア地域が属の数も種類数も豊富である。日本からはヘラズネクモバエNycteribia parvulla,ケブカクモバエPenicillida jenynsiiなど10種が記録されているが,そのうち2~3種ほどの記録は疑問視されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クモバエ」の意味・わかりやすい解説

クモバエ
くもばえ / 蜘蛛蠅

昆虫綱双翅(そうし)目環縫(かんほう)亜目クモバエ科Nycteribiidaeの昆虫の総称。体長3ミリメートルぐらいの無翅のハエで、褐色の体に剛毛が発達し、つめが大きい。体は一見クモを思わせるので名づけられた。成虫はコウモリ類に体外寄生して吸血する。卵は子宮内で孵化(ふか)し、幼虫も発育を完了し、前蛹(ぜんよう)で産み出され、ただちに蛹化する。この習性をもつグループはハエのなかで蛹生群とよばれている。ケブカクモバエPenicillidia jenynsiiは、頭部は円筒形で単眼を有し、毛を密生する。脚(あし)の脛節(けいせつ)には先端部に4、5列の剛毛をもつ。ニホンユビナガコウモリに寄生する、ヘラズネクモバエNycteribia parvula、ミカドクモバエN. allotopa mikadoなどは蹠節(せきせつ)側面が半円形を示す。いずれもまれな種類である。

倉橋 弘]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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