コウヤザサ(その他表記)Brachyelytrum erectum Beauv.ssp.japonicum(Hack.)T.Koyama et Kawano

改訂新版 世界大百科事典 「コウヤザサ」の意味・わかりやすい解説

コウヤザサ
Brachyelytrum erectum Beauv.ssp.japonicum(Hack.)T.Koyama et Kawano

イネ科多年草和名高野笹で,和歌山県高野山に生える笹の意味であろう。この草は日本の中部地方以西,四国,九州から中国の長江下流地域に分布し,その基本変種アメリカコウヤザサはアメリカ合衆国のアパラチア山脈に広く知られている。山地の疎林内や草地に生える,高さ60cmくらいの細い草本で,まばらに叢生(そうせい)する。葉は茎の節につき,やや小型で幅の狭い披針形で,長さ10cm,幅は6mmくらい,葉の表にまばらに毛がある。夏から初秋にかけて,茎の頂に細く目だたない円錐花序を出す。花序の長さは10~15cmで,その少数の短い枝は花序の軸に沿って立つ。小穂は各枝にまばらに少数個つき,長さ8mmくらいの細い披針形で,小さい鱗片状の苞穎(ほうえい)と1個の小花があり,小花の芒(のぎ)は2~3cmである。コウヤザサというがササとは関係がなく,ネズミノオや北アメリカのイネモドキ属Oryzopsisに近い草である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コウヤザサ」の意味・わかりやすい解説

コウヤザサ
こうやざさ / 高野笹
[学] Brachyelytrum japonicum (Hack.) Hack. ex Honda

イネ科(APG分類:イネ科)の多年草。根茎は短くて分枝し、稈(かん)は細く斜め上に伸び、高さ50~70センチメートル。葉の表面と縁(へり)にまばらに開出毛がある。7~8月、稈頂に細長い円錐(えんすい)花序を出し、まばらに小穂をつける。小穂は細く、1個の小花があり、包穎(ほうえい)は護穎よりはるかに小さく、長さが異なる。護穎は線状披針(ひしん)形で、先はしだいに狭まり芒(のぎ)となる。山地の林下に生え、中部地方以西の本州から九州、さらに韓国の済州島、中国にも分布する。名は、和歌山県の高野山にちなんでつけられた。コウヤザサ属は北アメリカにもう2種あるだけの珍しい属である。

[許 建 昌 2019年8月20日]

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