改訂新版 世界大百科事典 「コトディジ」の意味・わかりやすい解説
コト・ディジ
Kot Diji
パキスタン南部,シンド地方ハイルプルの南24kmにある先史遺跡。インダス文明都市期の文化とこれに先立つ文化との地層より成る。1955年以降パキスタン考古局のハーンF.A.Khānが発掘。自然層上に16層あり,上3層がインダス文明,下の13層がコト・ディジ文化と命名された。この文化は1946年にハラッパーの城塞構築以前の地層から検出されたプレ・ハラッパー文化,あるいは近年単独の遺跡として多数発見されている同種の文化とともに,インダス流域においてインダス文明出現の鍵をにぎるものとして重要。これをインダス文明の初期としてとらえる見解と,まったく別だとみる解釈とに分かれている。コト・ディジ文化はすでに周壁でかこった区とその区域外とにはっきり分かれ,銅は知らず,黒と赤褐色の水平線を口頸部に施した彩文土器,魚鱗文彩文土器に特色がある。この文化の後期には,遺跡全体にわたる大火災のあとが3層あったのち,インダス文明都市期の典型的な遺物とコト・ディジ文化の遺物とが混在する層をむかえる。この上にインダス文明都市期の層がのっている。インダス文明の波及をこの混在層は示すが,その時すでに文明は盛期にあったことが遺物からわかるので,コト・ディジ文化とインダス文明都市期の文化とは,一定期間並存したとみられる。なお,上層インダス文明の時期には,コト・ディジ文化時代にあった周壁は設けられず,村落化したと考えられる。
執筆者:桑山 正進
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報