ハラッパー(読み)はらっぱー(英語表記)Harappa

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハラッパー」の意味・わかりやすい解説

ハラッパー
はらっぱー
Harappa

インダス文明の代表的な都市遺跡の一つ。パキスタン中東部、パンジャーブ地方サヒワルの西方20キロメートル、ラービ川左岸に位置する。1922年のインド考古局のD・R・サハニによる発掘以来、バッツ、イギリスのウィーラーらが発掘を行ったが、遺跡の全容は、後世の破壊によってモヘンジョ・ダーロほどに明確ではなく、西側の城塞(じょうさい)部とその周辺が明らかにされているのみである。

 城塞部は南北に長いほぼ平行四辺形をなし、東西約200メートル、南北約400メートルの規模である。全体が焼成(しょうせい)れんがで表面を覆った日干しれんが製の厚い城壁によって囲まれており、北西と南東隅にそれぞれ見張り塔を置くほか、おそらくは北と西に城門を開け、所々には稜堡(りょうほ)が築かれていた。なかでもウィーラーの発掘した西門とそれに隣接する厚さ12メートルもの城壁基壇がもっともよくその様相を明らかにしており、この下層からは、文明形成以前の文化層のあることも明らかになった。

 城塞外の北西方、かつてのラービ川の涸(か)れ川河床との間に挟まれた地域にも、いくつかの重要な遺構がある。すなわち基壇の腰壁はモヘンジョ・ダーロのものほど高くはないが、床面積(800平方メートル余)においてそれとほぼ同様の、大規模で整然とした穀物倉が川に近い所にあり、その南方には円形に焼成れんがを敷き詰め、中央に木製の臼(うす)を据えたと思われる作業台を18個並べた作業場、またおそらくは労働者用の住居と思われる、規格化された小住宅を二列に配した建物などがある。

 一方、城塞外南方には二つの墓地が発見され、そのうちHと名づけられた墓地からは、文明最盛期よりのちの文化様相を示すH墓地文化の跡が明らかとなった。同文化の分布はインド国境に近いバハーワルプル地方にも跡づけられ、文明末期およびその後に関する諸問題を提示しているが、その詳細はまだ不明である。

[小西正捷]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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