改訂新版 世界大百科事典 「コモンベッチ」の意味・わかりやすい解説
コモンベッチ
common vetch
Vicia sativa L.
牧草として利用されるマメ科の一~二年草。原産地はヨーロッパから西アジアにかけての地域。オオカラスノエンドウともいう。日本へは大正時代(1912-26)にドイツから渡来したのでザートウィッケSaatwickeとも呼ばれる。カラスノエンドウに似るが,やや大型。茎は中空で断面は四角,長さ2~3mとなる。葉は十数枚の小葉からなる羽状複葉で,葉軸の先は巻きひげとなる。初夏に葉腋(ようえき)に蝶形花を1~2個咲かせる。花は紅紫色,長さ2cmほどである。さやは3.5~7cmほどに伸び,黒褐色に熟す。冷涼な気候を好むが,耐寒性はさほど強くなく,日本では西南暖地で秋まきする。他の草に絡み付くので,エンバクなどと混播(こんぱん)し,青刈りやサイレージとする。他の牧草類の導入で,近年は栽培が減っている。寒冷地では春まき栽培とするが,日本ではほとんど見られない。牧草として利用される近縁種にヘアリーベッチV.villosa Roth.(英名hairy vetch/smooth vetch)がある。
執筆者:星川 清親
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報