こよなし

精選版 日本国語大辞典 「こよなし」の意味・読み・例文・類語

こよ‐な・し

  1. 〘 形容詞ク活用 〙 他とくらべて、はるかにへだたりのあるさまを表わす語。善悪いずれにもいう。
  2. 他とくらべて違いがはなはだしい。格別に違う。格段の差がある。
    1. (イ) 比較の基準が示される場合。
      1. [初出の実例]「それはとしは、われにこよなくこのかみにぞおはせし」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開中)
    2. (ロ) 比較の基準が言外に示される場合。
      1. [初出の実例]「こよなくてけふはすずしきたもとよりあふぐかぜさへ秋になりつつ」(出典:中務集(989頃))
    3. (ハ) 比較の基準が通常の状態である場合。通常の場合に比べて格段に違う。
      1. [初出の実例]「おぼしまぎるとはなけれど、おのづから御心うつろひて、こよなうおぼしなぐさむやうなるも、あはれなるわざなりけり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
  3. 前後の関係から、「すぐれている」とか「劣っている」とかの意が付加された場合。
    1. (イ) 格段にすぐれている。
      1. [初出の実例]「母北の方見るに、帥はいと物ものしく、有りさまもよければ、さいへども、やんごとなき人のし給へることは、こよなかりけりとよろこぶ」(出典:落窪物語(10C後)四)
    2. (ロ) 格段に劣っている。
      1. [初出の実例]「限りなくめでたく見えし君だち、此の今見ゆるにあはすれば、こよなく見ゆ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)嵯峨院)
  4. 後世連用形連体形文章語として「この上ない」の意に用いられる。
    1. [初出の実例]「国人の為無上(コヨナキ)功徳に候はずやと思ひ詰て」(出典:暴夜物語(1875)〈永峰秀樹訳〉発端)
    2. 「たよは兄をこよなく頼みに思っていた」(出典:おあんさま(1965)〈大原富枝〉)

こよなしの派生語

こよな‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

こよなしの派生語

こよな‐さ
  1. 〘 名詞 〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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