改訂新版 世界大百科事典 「コロサイ人への手紙」の意味・わかりやすい解説
コロサイ人への手紙 (コロサイびとへのてがみ)
The Letter of Paul to the Colossians
最初期キリスト教の使徒パウロが,ローマの属州アシアの中西部の小都市コロサイの教会にあてて書いたとされる手紙。新約聖書に収められている。パウロはコロサイには一度も旅行しておらず,当地の教会はエパフラスによって設立されたとされる(1:7)。はたしてこの手紙がパウロの真正の手紙であるかどうかは論争されているが,パウロの他の手紙にはない宇宙論的キリスト論(1:15以下)や,〈すでに信徒の復活は起こったのだ〉との理解(2:12,3:1),さらに論敵の思想がより後代のグノーシス思想に類似していることなどからして,パウロの弟子の書いた手紙と解する学者が多い。ただしパウロ思想が継承されていることも明らかであり,パウロ存命中に弟子が代筆したとの見解もある。3章18節以下のいわゆる〈家庭訓〉では婦女子がまず男子よりも先に言及されて尊重されるという特徴が見られる。パウロの真正の《ピレモンへの手紙》のあて名人ピレモンと,その奴隷オネシモもコロサイ教会の信徒であった。
執筆者:青野 太潮
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