デジタル大辞泉
「執筆」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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しゅ‐ひつ【執筆】
- 〘 名詞 〙
- ① 記録すること。文書などを書くこと。しっぴつ。
- [初出の実例]「辨官雖レ非二参議一、候レ座執筆例也」(出典:権記‐長保二年(1000)九月二六日)
- ② 叙位・除目を主宰し記録する係。原則として関白を除いた第一の大臣がつとめるものとされるが、除目では天皇臨席の場合のみこれが守られ、大臣の直廬で行なわれるものでは参議である大弁がつとめるのが例であった。
- [初出の実例]「執筆以二私硯墨筆〈故実件筆可レ用二白管一〉小刀一給二外記一令二入替一」(出典:江家次第(1111頃)四)
- ③ 鎌倉時代、鎌倉・六波羅・鎮西にそれぞれ置かれた幕府の政務・裁判機関である引付(ひきつけ)において、訴訟関係文書の起草・清書・交付などをつかさどる役職、また、その人。本奉行。執筆奉行。公文。
- [初出の実例]「平家の思ひわすれかや、執筆(シュヒツ)のあやまりか」(出典:高野本平家(13C前)三)
- ④ 連歌や俳諧の席で、宗匠のさしずに従い、文台に臨み、参会者の出す句を懐紙に記入して披露する役。また、差合・去嫌を指摘し、会席がとどこおりなく運ぶように気を配ることも、その任務とされた。
- [初出の実例]「此間近臣雲客等結構二連句連歌一。俊光執筆」(出典:勘仲記‐弘安三年(1280)五月二七日)
- 「初の程は連歌とも思はれず、飛句ともいふべし。執筆(シュヒツ)も前句を吟ずること能はず」(出典:滑稽本・古朽木(1780)一)
- ⑤ ⇒しっぴつ(執筆)③
執筆の語誌
中古においては、「執筆」を「筆を手に執って書き始める」意味で使用した例や、「筆執」と転倒させた例も見られる。現代語の「小説を執筆(しっぴつ)する」のように作品の創造・創作に関しては用いられず、あくまで「筆で文字を書く」意味で、典籍を書写したり、文書を書記したり、和歌や議事を記録したりする場合に使用された。
しっ‐ぴつ【執筆】
- 〘 名詞 〙
- ① ( ━する ) 筆をとって文章などを書くこと。特に作品や記事など、まとまったものを書く場合にいう。しゅひつ。〔漢語便覧(1871)〕
- [初出の実例]「御執筆を願ふ訳には参りますまいか」(出典:戯作三昧(1917)〈芥川龍之介〉七)
- [その他の文献]〔後漢書‐蔡邕伝〕
- ② 記録、清書などをする役。また、その者。→しゅひつ(執筆)。〔新令字解(1868)〕
- ③ 香道で、聞香などの競技で成績を記録する役の人。しゅひつ。
- ④ 書道で、筆の持ち方。
執筆の補助注記
「執」は漢音「しゅう」、慣用音「しつ」であり、「執筆」は古く「しゅうひつ」または「しゅひつ」と読まれたと思われる。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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普及版 字通
「執筆」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の執筆の言及
【右筆】より
…中・近世における武家の書記役。執筆(しゆうひつ)ともいう。
[中世]
武家社会が成立して以後,行政事務の繁多によって文書処理の必要性が増大したが,文盲の多い武士間では,文筆を業務とする書記がしだいに専門化した。…
【挙句(揚句)】より
…規則により,前句から続けて春季の句になる。主客と亭主はこれをよまず,一座の記録係である執筆(しゆひつ)がよんでいない場合は,これを勤める。最後の一句になって付けあぐんでは興がさめるので,前の句に少々なじまずとも,あっさり付けるのがよく,あらかじめ用意しておくこともあった。…
【座】より
…[連句]制作のための集会または会席をいう。その構成要員は,一座をさばく師範格の[宗匠]と,宗匠を補佐しつつ句を懐紙に記録する書記役の執筆(しゆひつ)と,一般の作者である複数の[連衆](れんじゆ)から成る。彼らが参集して連句一巻を共同制作することを,一座を張行する,または興行するという。…
※「執筆」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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