コーンハイム(読み)こーんはいむ(その他表記)Julius Friedrich Cohnheim

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コーンハイム」の意味・わかりやすい解説

コーンハイム
こーんはいむ
Julius Friedrich Cohnheim
(1839―1884)

ドイツの病理学者。ベルリン大学でウィルヒョウ助手を務め、のちキール大学、ブレスラウ大学、ライプツィヒ大学の教授を歴任した。「炎症化膿(かのう)について」(1867)、「炎症に関する新研究」(1873)などを発表し、膿球が血流中にあった白血球の逸出によること、血管なしに炎症のないことを証明した。この説は、炎症が細胞の刺激から変性に至る過程と考えたウィルヒョウの説に反対することとなった。コーンハイムの『病理学総論』Vorlesungen über allgemeine Pathologie(1877~1880)は優れた著作で、英語訳、フランス語訳された。また腫瘍(しゅよう)の原因として、有名なコーンハイム迷芽説がある。彼は痛風のため長く患い、壮年で死去した。

古川 明]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コーンハイム」の意味・わかりやすい解説

コーンハイム
Cohnheim, Julius Friedrich

[生]1839.7.20. デミン
[没]1884.8.15. ライプチヒ
ドイツの病理学者。実験病理学の先駆者。キール,ブレスラウ,ライプチヒ各大学教授を歴任した。凍結切片作成法や鍍銀法を組織切片検査に採用し,顕微鏡使用法で多くの有用な改良をなしとげた。 1867年から 73年にわたって発表した諸論文で,炎症は白血球が毛細血管の壁を通って外へ出ることに起因し,その白血球の分解したものが膿となることを証明した。また癌の成因を正常組織に迷入した胚芽の残遺からとする「コーンハイムの迷芽説」でも有名。主著『一般病理学講義』 Vorlesungen über allgemeine Pathologie (1878) は,病理学の講義方法を改革したもので,19世紀の標準的教科書となった。

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