痛風(読み)ツウフウ(その他表記)gout

翻訳|gout

デジタル大辞泉 「痛風」の意味・読み・例文・類語

つう‐ふう【痛風】

高尿酸血症による急性の関節炎。体内で過剰になった尿酸が、血液に溶けきれず、結晶化し、関節に沈着。これを白血球が異物と認識して攻撃し、炎症が引き起こされる。足親指の付け根に好発し、歩行が困難になるほどの激痛を伴う。足の甲や足首、膝や肘に発症することもある。

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精選版 日本国語大辞典 「痛風」の意味・読み・例文・類語

つう‐ふう【痛風】

  1. 〘 名詞 〙 足や手の関節が腫れて、激しく痛む病気。手足の母指基関節に多く発する。蛋白質を多くとりすぎた場合、これが体内で消化される過程でできる尿酸が血液中にふえ、冷え・外傷・疲労などが誘因となって、尿酸塩が関節軟骨や鼻、耳朶の軟骨に沈着しておこる。絶えず患部の関節に鈍痛や不快感があり、病状が進むと関節の激痛を示す。肉類の多食を好む肥満型に多い。痛疾風。〔医学天正記(1607)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「痛風」の意味・わかりやすい解説

痛風
つうふう
gout

血液中の尿酸値が高くなった高尿酸血症から急性の関節炎をおこす疾患群の総称である。細胞成分である核酸は簡単なアミノ酸に、アデニン・グアニンといったプリン塩基、リン酸、五炭糖(ペントース)が結合して合成される物質である。これはプリン体を経て分解され、尿酸が核酸の最終代謝産物となって、おもに腎臓(じんぞう)から排泄(はいせつ)される。したがって、尿酸生成増加、尿酸排泄低下など尿酸の代謝過程に異常がおこると高尿酸血症となり、痛風の素地ができる。なお核酸は、現在ではデオキシリボ核酸(DNA)とリボ核酸(RNA)といった遺伝子をつくる物質といったほうがわかりやすい。一つの細胞の中には数十億個のDNAがあり、人体をつくる細胞数(60兆個)を考えると、人は約1017個のDNAでできているといえる。

 痛風は足の激烈な痛みのために歩行できなくなる病気として紀元前から知られ、また治療薬としてサフランが有効であることも知られていた。さらにその後、美食、飲酒の好きな患者が多いところから王侯、貴族の病気ともいわれてきた。現在の日本では約60万人の患者が外来通院し、さらに増加傾向にある。高血圧患者における高尿酸血症患者の頻度が高く、原因は肉類などプリン体の多い食品のとりすぎ、体質素因、ストレス、アルコール飲料過剰摂取(とくにビールの過飲)、肥満などであることが明らかになってきた。発症が若年化し、30歳から40歳代の活動的な成人男性に多く、女性は男性の5%以下である。また、本人以外に親やきょうだいなどに痛風患者がいる場合も数十%に及び、家族性がある。

[赤岡家雄]

痛風性高尿酸血症

痛風ないし無症候性の高尿酸血症には、尿酸が過剰に産生される産生過剰型と、尿酸の腎臓からの排泄が低下している排泄低下型とがあり、いずれも原因不明の一次性のものが大部分を占める。その中間型は食事事情が原因のものが多い。なお、特殊型として小児で高尿酸血症のみられるレッシュ・ナイハンLesch-Nyhan症候群がある。これは、プリン代謝系の一種の酵素が欠損しているため、逆にプリン生合成の亢進(こうしん)からさらに尿酸の著しい過剰産生がおこる男性の伴性潜性の先天性疾患である。幼少時に高尿酸血症から痛風になるほか、知能障害をはじめ、同じ姿勢が維持できないアテトーゼアテトーシス)、踊っているようにみえる舞踏病、脳卒中にみられるようなけいれん性麻痺(まひ)、自分の指や口唇をかじる特異な自傷行為などを示すひとつの疾患である。

 二次性に尿酸の過剰産生を示す疾患としては赤血球の増加する多血症のほか、白血病をはじめ、グルコース-6-フォスファターゼという酵素が欠損しておこるⅠ型糖原病、Ⅶ型糖原病などがある。二次性に尿酸の排泄が低下する疾患としては慢性腎炎や急性アルコール中毒があり、薬剤ではアスピリンのようなサリチル酸剤やサイアザイド系のループ利尿剤などによる尿酸排泄障害の結果高尿酸血症が示される例も少なくない。

[赤岡家雄]

痛風性関節炎

痛風の関節炎は、体内で過飽和になった尿酸が針状の結晶として関節内などに析出し、それを白血球が貪食(どんしょく)して炎症がおきた状態である。数年経過すると尿酸は関節内のほか、耳の軟骨部、肘(ひじ)や足底、手背の皮下などにも炎症をおこさずに沈着し、結節状の痛風結節をつくることがある。

 急性の関節炎は、ある日突然に足の母指(親指)の基部の関節が痛み始め、数時間内に腫(は)れて熱感が強度になり、起立さえできなくなる。この関節炎は一般に1週間くらいで完全に治る(寛解)ので関節炎発作とよばれる。足の母指が好発部位であるが、その確率は40%くらいで、足の他の指、足首、アキレス腱(けん)部、膝(しつ)関節などに炎症がおこることも60%くらいの確率である。初めは年に1回くらいであるが、数年内に頻度が増加するとともに、関節部位も小関節から膝、肘(ちゅう)関節など大関節へと広がる。痛風性関節炎発作には、このようにいくつかの特徴がある。とくに、(1)ある日突然おきる、(2)ときには1日で起床できなくなる、(3)1か所におきる、(4)治りかけると別の関節にもおきる、(5)片側性で非対性である、(6)治るのは早い、(7)尿酸を下げる薬を服用すると、さらに関節痛が悪化することも普通である、などは、ほかの関節炎と明らかに違うところである。そのほか、腎臓や尿管などに主として尿酸の結石をつくり、尿中に赤血球の出る血尿、腹背部の急性の痛み(腎仙痛)などがしばしばおこる。診断には尿酸値の検査が最重要で、高尿酸血症の場合は血清100ミリリットル中に7.0ミリグラム以上とされているが、痛風患者の多くは9.0~10.0ミリグラムである。なお、尿酸値が8.0ミリグラム以上の場合は治療(服薬)が必要とされている。

[赤岡家雄]

痛風の合併症

痛風は明らかな腎障害のほか、代謝障害として、肥満、高血圧、心筋障害、糖尿病、血中脂肪の増加や中等度の腎臓の機能障害などを合併することが多い。これは動脈硬化があることを示すもので、放置すると腎機能低下から腎不全をおこし、早期に死亡する可能性がでてくる。しかし、最近は痛風の治療によって合併症が早期に予防され、天寿を全うできるようになってきた。

[赤岡家雄]

治療

急性関節炎発作(痛風発作)に対して、昔はサフランの成分であるコルヒチンが特効薬として用いられてきた。現在はコルヒチンのほか、非ステロイド抗炎症剤、ステロイド剤の適切な量の投与が必要とされている。高尿酸血症が急性関節炎、尿路結石、腎臓障害などの原因となり、病状が進展していくので、この改善のほか予防が治療の目標となる。また、肥満、高血圧、糖や脂質の代謝改善も合併症の防止のうえで、たいせつである。

 食事療法としては食品の摂取総カロリー量制限、尿酸の排泄、産生に影響を与えるアルコール類の摂取抑制が必要になる。食事療法で不十分なときは、尿酸排泄促進剤(ベンズブロマロン)や尿酸産生抑制剤(アロプリノール)などの長期間の投与が必要となる。尿路結石が問題になるときは、尿アルカリ化剤もたいせつとなる。

[赤岡家雄]

『赤岡家雄著『痛風は忘れたころにやってくる――痛風を退治する生活術』(1993・ごま書房)』『赤岡家雄著『痛風が気になる人へ』(1994・東洋出版)』『赤岡家雄著『「痛風」前線にご用心!――高尿酸血症・痛風の予防と治療』(1996・木馬書館)』『山中寿著『痛風とつきあう法』(1998・東京新聞出版局)』『鎌谷直之監修・山中寿著『やさしい痛風の自己管理』(2002・医薬ジャーナル社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「痛風」の意味・わかりやすい解説

痛風 (つうふう)
gout

尿酸の生成や排出の異常から,高尿酸血症となり,末梢の関節などに発作的な疼痛を繰り返す病気。一次性または特発性痛風と二次性または続発性痛風があるが,一般に痛風といえば一次性または特発性痛風のことをいう。背景には先天性あるいは遺伝性素因があり,原因は不明である。二次性または続発性痛風は,造血器疾患,薬剤中毒,酵素欠損によって起こる。そのため痛風は一つの症候群とされている。

 いずれも基盤となるのは,動物性タンパク質のようなプリン体摂取過剰,尿酸の過剰生成と腎臓での排出低下による高尿酸血症である。血清尿酸の正常値は3.4~6.3mg/dlで,7mg/dl以上は高尿酸血症といわれ,体内の尿酸プールが正常の人よりも拡大している。そのため長い間,高尿酸血症が続くと痛風にかかりやすい。

30~40歳代の飽食する男性に多い。女性ではきわめてまれで,更年期以後に発症することがある。糖尿病や高血圧を合併する肥満体の人によくみられ,遺伝的に発生することがあって,兄弟または親子の間の発生もみられる。食事で動物性タンパク質を好む美食家に多い。アルコール飲料は痛風の症状を誘発する。痛風の発生頻度は0.2~0.4%といわれ,日本ではかつてはまれな病気であったが,近年増加し,欧米のそれに近づきつつある。

 典型的な症状は,足の第1指(母指)の基関節,足根関節および足背部に激痛と発赤,腫張のある急性関節炎である。これは治療の有無にかかわらず4~5日で治り,〈痛みが風のごとくやってきて,風のごとく去っていく〉と俗にいわれる経過をとる。この関節炎は,足の母指が70%で,他の場所,足関節,アキレス腱の周囲,膝関節や,まれには手指にも起こる。

 この急性症状は,尿酸塩が結晶となって関節や関節周囲に滲出して多核白血球がこれを食べ,その際放出する酵素や催炎物質によって起こるもので,これを結晶誘発性発症と呼んでいる。

 このように,急性関節炎の症状は高尿酸血症が続いているかぎり,再三にわたって繰り返され慢性化していく。滲出または析出した尿酸塩は吸収されず,関節軟骨,腱や耳朶軟骨をはじめ結合組織に沈着する。やがて慢性期になると,関節が変形したり痛風結節tophusが形成される。痛風結節の好発するところは,耳朶,足指,眼瞼,肘頭の順に多い。腎臓にも尿酸塩が沈着し,痛風腎が起こり,尿酸結石が形成される。この状態で慢性腎炎を続発すると尿酸排出量が低下し,尿酸プールがますます拡大して皮下結合組織にまで痛風結節が現れ,やがて尿毒症で死亡する。

痛風の診断のための基準として,ウォーレスS.L.Wallaceらが報告したアメリカ・リウマチ協会のものが参考となる。次の11項目中の6項目以上を満たせば,痛風の診断が確定的となる。

 (1)急性関節炎が1回以上起こっていること。(2)24時間以内に関節炎がピークに達すること。(3)少数関節炎型の発作のあること。(4)関節周囲に発赤がみられること。(5)足の母指(第1指)基関節の痛みとはれがあること。(6)一側性の中足指関節の関節炎発作があること。(7)一側性の足根関節の関節炎発作のあること。(8)痛風結節がみられること。(9)高尿酸血症があること。(10)X線写真で一関節内に非対称のはれをみること。(11)痛風発作が完全に消えること。このほか,家族に痛風患者があったり,腎臓や尿管結石,高血圧,糖尿病を合併していることが診断の参考にされている。

急性関節炎症状に対しては,抗炎症鎮痛剤を使用してこれを改善させる。次いで最もたいせつなのは,急性発作を繰り返さないために,基盤となっている高尿酸血症に対する治療である。激痛,発赤,腫張(はれ)の急性期の炎症にはコルヒチンが特効薬と考えられ,1回1~2mgを2時間おきに服用すれば,10時間以内に効果が現れる。しかし副作用があるため最近では他の優れた薬剤にとって代わられ,コルヒチンは用いられていない。フェニルブタゾン,インドメサジン,フェンブヘン,トルメチンソーダ,ナプロキセンの非ステロイド系薬剤,およびステロイド製剤が用いられる。

 高尿酸血症の治療としては,尿酸排出剤と尿酸合成阻害製剤が用いられる。痛風発作や関節炎症状がなければ,高尿酸血症といっても,まったく無症状であるため,医師も患者も忍耐強く尿酸値を正常化することが重要である。一方,痛風患者は尿酸の過剰産生を避けるために,食事を高プリン食,高カロリー食,高タンパク食,高脂肪食に偏らせないことが大事である。尿酸の排出を促進することを心がけ,排尿回数を増やす飲料がよい。無症候性高尿酸血症であっても,血清尿酸値が8mg以上の場合には,尿酸排出剤を用いて治療したほうがよいといわれている。

 尿酸合成阻害剤のアロプリノールは,肝臓での酵素活性を抑制するので,進行した痛風や,腎臓障害の強いものや腎臓結石のあるものに使用するのがよい。軽症の場合は,尿酸排出剤のフェニルブタゾン,スルフィンピラゾンを長時間投与して尿酸値をコントロールすれば安全で効果もよい。

 痛風は,まず不治といってよい。予後の良悪は腎臓機能によって左右される。したがって,腎臓障害を起こさないような高尿酸血症や尿酸プールの増大に対する対策や治療が必要である。腎臓機能を正常に保ちながら急性症状の発作をコントロールすれば,それほど懸念する病気ではない。
執筆者:

痛風は古代エジプトにもあったことが考古学的資料から推定される。ヒッポクラテスは歩くことが困難になる病気としてよく認識しており,ガレノスは遺伝と放蕩の病気であると述べ,痛風結節について記述している。痛風の英語gout,フランス語goutteはラテン語のgutta(〈滴り〉の意)から派生し,なにか毒物が関節内に侵入したものと考えられ名づけられた。痛風は美食家,金持ち,権勢のある高位の人に多かったので,罪の意識と結びつき,この病気の持主は,その悪徳を強く戒められたという。原因がわからない時代には,治療法として薬草,鍼(はり),瀉血(しやけつ),串線挿入などがほどこされていたが,13世紀にはイヌサフランから得られるコルヒチンの薬効が認識された。マルコ・ポーロによると元のフビライ(世祖)は痛風に侵されていたといわれるが,とくに近世のイギリス,フランスの王族と政治家・文化人に痛風患者が多い。人文主義者のエラスムス,宗教改革者ルター,詩人ミルトンたちはいずれも痛風であり,エリザベス朝の政治家W.セシル,ピューリタン革命の指導者O.クロムウェルも痛風に悩まされた。イギリス国王ではヘンリー7世,同8世,アン女王,フランス国王ではルイ14世が痛風であり,アメリカの政治家フランクリン,A.ハミルトン,さらに科学者ではニュートン,C.ダーウィンたちが痛風であった。

 18世紀末になって痛風と尿酸との関係が知られ,20世紀になって尿酸の構造が明らかになり,こうして長い間原因不明だった痛風が尿酸代謝障害による疾患であることが解明された。日本では古医書に痛風という用語は出ているが,広い意味で用いられていた。これまで日本人には痛風は少ないとされてきたが,最近では日本も欧米と変りないことが知られ,また第2次大戦後日本人の生活が欧米に近づくにつれ,痛風患者はますます増加の傾向を示している。なお,知識人に痛風患者が多いことから,知的活動の旺盛さと尿酸,あるいはプリン誘導体の働きには何か関連があるのではないかと推定されている。
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六訂版 家庭医学大全科 「痛風」の解説

痛風
つうふう
Gout
(運動器系の病気(外傷を含む))

どんな病気か

 血液中の尿酸値が高い状態(高尿酸血症(こうにょうさんけつしょう))で、足趾(そくし)(あしのゆび)や足首、膝などに起こる急性の関節炎です。とくに足の母趾(ぼし)の付け根の関節(母趾MP関節)が最も多くみられ、初めて発症される人の7割がこの部位です。

 日本での有病率は0.1~0.3%と推測され、90%以上が男性です。発症年齢は40代前後に多く、最近は若年化の傾向がみられます。

原因は何か

 高尿酸血症が続くと尿酸の結晶が関節の組織に沈着し、その結晶が関節内に遊離するとそれに反応して炎症が起こるとされています。尿酸はプリン体という物質の最終産物で、主に肝臓で産生され、腎臓から排泄されます。

 高尿酸血症は、尿酸産生過剰あるいは排泄低下、あるいはそれらの混合のいずれかにより現れます。原因は不明ですが、ある程度の体質(遺伝性)が関与しており、アルコール(とくにビール)や甘い飲み物なども増悪させます。典型的なタイプとしては、活動的な中年男性で、アルコールや肉食を多く摂取する習癖がある人に多いようです。ただ、他の原因として、多発性骨髄炎(たはつせいこつずいえん)悪性(あくせい)リンパ腫(しゅ)、悪性貧血(ひんけつ)白血病(はつけつびょう)などの病気がひそんでいる場合や、ある種の利尿薬などで尿酸値が上がる場合があるので注意が必要です。

症状の現れ方

 発作前に前兆(チクチクする、圧迫感、熱っぽいなど)を自覚し、6~12時間後に発作が始まることが多いようです。発作時は激烈な痛みで、はれ、発赤、熱感を伴います。発作は通常、24時間以内にピークを迎え、3~4日後には徐々に改善し、7~10日で自然におさまります。

 放置すると発作を繰り返し、だんだんと症状が増悪してきます。また、発作の間隔が次第に短くなり、慢性の関節炎へと移行します。進行すれば関節軟骨が傷んで骨に欠損が生じ(びらん)、関節の変形や機能障害が残る場合もあります。

 痛風結節(けっせつ)が、肘、足の関節周囲や耳にできることがあり、時に破れて皮膚潰瘍(かいよう)を生じます。また、尿酸塩が沈着して尿路結石(にょうろけっせき)、腎障害(痛風腎(つうふうじん))、虚血性心疾患などが問題になることもあります。

検査と診断

 発作時の血液検査では、白血球数の増加、赤血球沈降速度の亢進、C反応性蛋白(CRP)の陽性など、炎症性の変化がみられます。急性の関節炎で、血液中の尿酸の値が高ければ診断は容易ですが、約4分の1では発作時の尿酸値は正常です。高尿酸血症は男女とも7.0㎎/㎗を超えるものと定義されています。関節の液を検査して、尿酸の結晶を証明することも診断には非常に有用です。

 X線検査では、発作を繰り返している例では骨の欠損(びらん)や変形を認めることもあります。進行すれば、関節の変形や破壊がみられることもあります。

治療の方法

①発作の前兆時

 発作の前兆時に、コルヒチンを内服すると未然に発作を予防することができます。ただし、いったん発作が始まるとその効果が弱まります。

②発作時

 関節の安静を保ち、非ステロイド性抗炎症薬で痛みを抑えます。いろいろな種類がありますが、血中濃度の上昇が速く、血中半減期が短いものを使用します。症状が強い時は、副腎皮質ステロイド薬の内服または関節内注射で対応することもあります。

 尿酸コントロール薬(後述)は発作時に内服すると、尿酸値が変動して関節炎が逆に悪化することがありますので、2~4週後から服用します。

③発作がない時

 発作がない時は、尿酸産生阻害薬(アロプリノール)または尿酸排泄促進薬(プロベネシド、ベンズブロマロン)で高尿酸血症を改善させます。血清尿酸値5~6㎎/㎗を目標とし、少量から開始して維持します。尿をアルカリ化して尿路結石を防止する目的で、重曹やウラリットを1日2~3g内服します。

 また、高尿酸血症の治療には、薬物治療だけでなく生活習慣の改善が重要です。肥満の解消、アルコール飲料の制限、プリン体の摂取制限、十分な水分の摂取、運動、ストレスの解消などがすすめられています。

病気に気づいたらどうする

 急に足などの関節に痛みや発赤が生じた場合には、痛風発作の可能性を考え、整形外科または内科の専門医に受診してください。薬により尿酸値をコントロールすることは比較的容易で、痛風そのものは予後が良好です。

 しかし、約8割の人が脂質異常症糖尿病や心疾患、脳血管障害などの生活習慣病を合併しているといわれています。痛風発作をこれらの疾患の危険信号ととらえて、きちんとした全身管理に取り組むことも重要です。

関連項目

 化膿性関節炎関節リウマチ偽痛風

田中 浩

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食の医学館 「痛風」の解説

つうふう【痛風】

《どんな病気か?》


〈発作的なはげしい痛みは、ぜいたくな食生活が原因〉
 痛風(つうふう)は、足の親指をはじめ、関節にはげしい痛みをともなう病気です。つねに痛みを感じるわけではなく、発作的(ほっさてき)に痛みが生じます。このような痛みは、血液中で増加した尿酸が結晶化し、関節に沈着するために起こります。つまり痛風は、尿酸(にょうさん)の増加によって起こる病気なのです。
 尿酸の増加は、尿酸が多くつくられることと、うまく排泄(はいせつ)されないことが原因です。また、尿酸のもとになっているのがプリン体という物質で、細胞の遺伝子である核酸(かくさん)(DNA、RNA)の構成成分です。そのため、ほとんどの食品にプリン体は含まれており、痛風にはこの摂取をひかえることが第一です。同時に、プリン体は分解されると尿酸になるので、尿酸を体外に排出することもたいせつです。
 かつて、痛風は帝王病といわれていましたが、これは食生活の豊かな裕福な層の人たちに多くみられ、ぜいたく病としてとらえられていたからでした。しかし、近年では、食生活に差がなくなり、全体的に豊かになっているため、痛風になる人が増加し、約87万人と報告されています(国民生活基礎調査2004年)。また、40~50歳代の男性に多くみられるのも特徴です。この年代では、外食も多く、飲酒の機会も多いでしょう。痛風の痛みは薬によって取り除くことができますが、根本的な改善にも予防にも、食事療法が重要になります。また、脂質異常症や高血圧症と合併することも多く、さらには、動脈硬化(どうみゃくこうか)や心筋梗塞(しんきんこうそく)、脳卒中(のうそっちゅう)などの発症につながることもあります。人間ドックや健康診断の際に尿酸値をチェックし、はげしい痛みが生じる前に、食事に気をつけるようにしたいものです。

《関連する食品》


〈プリン体の摂取をひかえ、アルカリ性食品で酸化を防ぐ〉
 原因となるプリン体は、含有量に差がありますが、ほとんどの食品に含まれています。以下を参考に、じょうずな食品選びをしましょう。
<食品中のプリン体含有量>
 食品の量は1回使用量の目安です。
・鶏レバー80g=約250mg
・豚レバー80g=約230mg
・鶏もも80g=約84mg
・鶏ささみ2本=約45mg
・豚ひれ80g=約95mg
・牛もも80g=約90mg
・牛ひれ80g=約80mg
・牛ロース80g=約72mg
・豚バラ80g=約60mg
・ボンレスハム2本=約20mg以下
・ウインナーソーセージ2本=約20mg以下
・大正エビ4尾=約150mg
・アジ干物1枚=約80mg
・イカ1/2尾=約75mg
・マイワシ2尾=約75mg
・サンマ干物1枚=約75mg
・カツオ1人前=約70mg
・イワシ干物中2本=約65mg
・カキ5個=約65mg
・タコ100g=約140mg
・ニジマス1尾=約55mg
・ニシン中1尾=約55mg
・マグロ1人前=約55mg
・ゆでダイズ大さじ3杯=約50mg
・サンマ1尾=約45mg
・サワラ1切れ=約45mg
・サバ1切れ1/4切=約45mg
・ブリ1切れ=約45mg
・生サケ1切れ=約45mg
・ウナギ1串=約40mg
・たらこ1腹=約35mg
・カリフラワー100g=約57mg
・ホウレンソウ1/3束=約30~25mg
・納豆1/2パック=約30~25mg
・白米1杯=約20mg以下
・プロセスチーズ20g=約20mg以下
・たまご1個=ほぼ0mg
(東京慈恵会医科大学内科学第2・細谷龍男教授資料より作成)

 そして、帝王病といわれていたように、食べすぎやぜいたくな食事は避けたいところです。また、痛風は肥満の人に多くみられるため、適正な摂取カロリーを維持することもたいせつです。
 たんぱく質や糖質、脂肪を多く含む食品や、アルコール類はひかえましょう。
○栄養成分としての働きから
 逆に、尿酸を排出するために、水分はたっぷりと補給しましょう。このとき注意したいのが、糖分の入った飲料は避けることです。水や烏龍茶などが適当です。
 積極的に摂取したいのが、モヤシやジャガイモ、トマトなどの野菜類、ワカメやコンブ、ノリなどの海藻類です。プリン体含有量が少ないうえ、低カロリー。しかもアルカリ性であるため、尿の酸化を防ぎ、尿酸の増加を抑えてくれます。
 また、カリウムには利尿作用があり、尿酸の排出をうながします。水分の多いスイカなどでとるといいでしょう。

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百科事典マイペディア 「痛風」の意味・わかりやすい解説

痛風【つうふう】

尿酸の生成や排出の代謝障害により,プリン体の終末産物である尿酸が血中に増加する病気。30〜40歳代の男性に多い。遺伝的な体質にもよるが,高エネルギー食の過剰摂取やアルコールの過飲,肥満なども要因となる。夜間,突然に足の親指の関節や,そのほかの手足の末梢の関節が激痛とともにはれ,皮膚は光沢のある淡青色を呈し,発熱する。この発作は数日間繰り返し,慢性になると関節嚢,骨膜,腱(けん),耳殻などに尿酸ナトリウムが沈着して痛風結節を作り,運動障害などを生ずる。心臓・腎臓にも障害が及ぶ。治療には肥満を避けるための食事療法を行い,尿酸生成抑制剤,尿酸排出剤を服用。
→関連項目関節炎高脂血症高尿酸血症老人病

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「痛風」の意味・わかりやすい解説

痛風
つうふう
gout

血液中の尿酸値が異常に高くなる高尿酸血症を基礎にして,足指関節の激しい疼痛を症状とする病気。骨奇形を伴いやすく,耳殻やその他の関節の軟骨組織にも,尿酸塩の沈着による変形と疼痛の生じることがある。足指,ことに母指の中足指節関節に多発する (足痛風) 。先天性代謝異常の代表的なもので,原因は尿酸と尿酸塩が過量にできて排泄しきれず,体内に蓄積されるためである。しばしば尿路結石や腎障害を伴う。尿酸がプリン体代謝の最終産物であることから,以前はプリン体を豊富に含む食事の摂取が原因といわれ,治療に際してはその種の食品が厳しく制限されたが,プリン体を大量にとったからといって,高尿酸血症が起きるわけではなく,プリン体だけを制限しても治療効果は上がらない。治療は薬物療法と食事療法が行われる。

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生活習慣病用語辞典 「痛風」の解説

痛風

高尿酸血症 (尿酸値が 7.0mg/dl を超え、尿酸の濃度が濃くなっている状態) が持続した結果、組織に尿酸塩が沈着し、足指などの関節炎や腎臓がおかされる病気です。特に、関節に沈着した場合はひどい痛みを伴います。

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とっさの日本語便利帳 「痛風」の解説

痛風

高尿酸血症を基盤として繰り返し起こる、急性関節炎発作・腎結石・腎障害などを起こす症候群。三〇~六〇歳代の男性に多く、激痛のある関節炎、痛風結節、腎障害が三大症状。

出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報

普及版 字通 「痛風」の読み・字形・画数・意味

【痛風】つうふう

痛痺。

字通「痛」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

栄養・生化学辞典 「痛風」の解説

痛風

 高尿酸血症,関節炎,痛風結節などを症状とする疾患.関節に尿酸の蓄積がみられる.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の痛風の言及

【尿酸】より

…健康なヒトの尿中には1日約0.2~1.0g(平均0.42g)の尿酸が含まれ,血中尿酸量は2~4mg/dlで,5mg/dlをこえない。ところが,痛風やレシュ=ナイハン症候群Lesch‐Nyhan syndromeの患者では,プリン代謝の異常のため,多量の尿酸が血中,尿中に見られる。痛風患者では6~7mg/dlで,最高20mg/dl,またレシュ=ナイハン症候群患者では血中濃度が10mg/dl,尿中では体重1kg当り40~50mg/日。…

※「痛風」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、和歌山県串本町の民間発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げる。同社は契約から打ち上げまでの期間で世界最短を目指すとし、将来的には...

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