サパティスタ民族解放軍(読み)さぱてぃすたみんぞくかいほうぐん(英語表記)Ej(e)rcito Zapatista de Liberaci(o)n Nacional(西)

知恵蔵 「サパティスタ民族解放軍」の解説

サパティスタ民族解放軍

メキシコ南部のチアパス州で1994年1月1日に武装蜂起した先住民主体のゲリラ組織。ラカンドン密林を拠点に闘争を続け、貧困のままに放置された先住民の人権が守られるような政治の体制変革を主張した。一帯に住むマヤ系の先住民は大農園に低賃金で雇われ、スペイン語を話せないことから先祖代々の土地を大企業に奪われるなど、歴史的な不公正や非人道性が背景にある。95年3月にはEZLNの指導者に対する特赦法案が成立し、96年2月には「先住民の権利と文化」で合意したが、和平には至っていない。EZLNは目出し帽姿のマルコス副司令官がスポークスマン役を務めている。2001年2〜3月にかけて、幹部24人が「先住民の尊厳のための行進」としてチアパス州から首都まで平和的にパレードした。その後は政府との交渉が行き詰まり、03年7月に政府との交渉停止を宣言。同8月にはチアパス州に30の自治区を設け、5つの統治評議会を立ち上げ「反乱ラジオ」の放送を開始した。05年6月にはいったん非常事態を宣言したが、06年の大統領選に向けて左翼勢力の結集を目指す方向を確認した。

(伊藤千尋 朝日新聞記者 / 2007年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サパティスタ民族解放軍」の意味・わかりやすい解説

サパティスタ民族解放軍
サパティスタみんぞくかいほうぐん
Ejército Zapatísta de Liberación Nacional; EZLN

メキシコ南部のチアパス州各地で 1994年1月1日に武装決起したマヤ系先住民主体の農民組織。組織名は 20世紀初めのメキシコ革命の英雄 E.サパタにちなむ。政府や州に対し,農民を極貧状態に放置するのをやめるよう訴え,陸軍基地などを襲撃した。同日に発効したカナダ,アメリカ,メキシコ間の北米自由貿易協定 NAFTAが,メキシコ農業を圧迫するものとして反発したのも決起の理由とされた。政府は3月,大統領の退陣を除き,先住民集落の生活改善など EZLNの要求の大半を受入れる和平協定調印で合意したが,EZLN側は6月に協定を拒否,野党民主革命党と共闘して町村役場を占拠した。 95年1月再び停戦合意が成立,2月 EZLN幹部5人が逮捕されたが,4月政府は強硬策を撤回して交渉が再開された。

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