日本大百科全書(ニッポニカ) 「サヨリトビウオ」の意味・わかりやすい解説
サヨリトビウオ
さよりとびうお / 細魚飛魚
smallwing flyingfish
oceanic flying halfbeak
[学] Oxyporhamphus micropterus micropterus
硬骨魚綱ダツ目トビウオ科に属する海水魚。サヨリ科に分類する研究者もいる。西太平洋からインド洋の熱帯・亜熱帯にかけて広く分布し、日本では岩手県以南の太平洋沿岸と新潟県以南の日本海沿岸、小笠原諸島に生息する。体は細長くてサヨリに似る。成魚では下顎(かがく)は上顎よりすこし長い程度であるが、稚魚では下顎はくちばし状で長く、体長の2割余りもある。ほかのトビウオ類より胸びれが著しく短く、その後端は体の中央よりやや後方に達する程度である。胸びれの基底付近から後走する銀青色の1縦帯がある。全長20センチメートル近くにしかならない小型種。尾びれが短いが、滑空する。外洋の表層にすむ。
熟卵は直径2ミリメートルの球形で、卵膜上に多数の小突起物が散在する。仔魚(しぎょ)は全長4.5ミリメートル余りで卵黄を吸収する。20~25ミリメートルの稚魚では、すでに尾びれの下半分が長くなり、体の背面に鱗(うろこ)がある。体長6センチメートルで下顎が短縮する。稚仔魚は東シナ海や西太平洋に6~9月に出現する。成魚は日本ではあまりみられないが、トビウオ類とサヨリ類の中間型をし、トビウオ類がサヨリ類のような祖先型から進化したことを示す点で学術上重要な種類である。
[落合 明・尼岡邦夫]