改訂新版 世界大百科事典 「サルエビ」の意味・わかりやすい解説
サルエビ (猿蝦)
Trachypenaeus curvirostris
沿岸性の甲殻綱クルマエビ科のエビで,日本の各地の内湾に多産する。とくに東京湾,伊勢湾,瀬戸内海,有明海などに多く,50m以浅の砂泥底が主漁場である。体長12cmに達するが,雄のほうがやや小型で,多くは10cm程度である。青みを帯びた灰色で,腹面はやや黄色っぽい。甲は厚く,全面に粗毛が生えている。額角がよく発達し,上縁に6~8本のとげがある。体長5.5cm以上の個体では額角の先端部が上方へかなり湾曲している。尾節の背面には正中線に溝があり,側縁に3対のとげがある。産卵期は4~11月と幅があるが,盛期は7~8月である。産卵期の初期に孵化(ふか)したものは短期世代で,秋には産卵して死ぬ。7月ころから多量に見られるようになる稚エビは翌年満1年で産卵する。夏に打瀬網で多獲され,むきエビ,干しエビ,つくだ煮などにされるが,釣餌としても重要である。
執筆者:武田 正倫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報