翻訳|surfing
世界に3500万人を超える愛好者がいるとされ、ファッション性が高いマリンスポーツとして若者を中心に人気がある。競技としては海岸だけでなく、人工波をつくる技術を用いて湖などでも実施可能という。東京五輪では波乗りの技術を競う「ショートボード」が選ばれた。国際サーフィン協会は8月、千葉県を会場候補地として挙げた。
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サーフボードを用いて行う波乗りのことで、サーフボード・ライディングsurfboad ridingともいう。外海に面した海岸で高波をとらえ、波の斜面をサーフボードで滑り降りるスポーツ。ポリネシア人たちの間で古くから行われており、1778年ハワイに初めて到達したキャプテン・クックの記録によると、王族を含めた島民がサーフィンを楽しんでいたようすが詳しく書かれている。このハワイのサーフィンが世界に広まったのは、ハワイ出身の水泳選手デューク・カハナモクDuke Kahanamoku(1890―1968)の努力に負うところが大きい。カハナモクはサーファー(サーフィン選手)としての技術ももっており、世界各地でサーフィンを披露して、スポーツとしてのサーフィンの普及に貢献した。従来のサーフボードは木製で重く(50キログラム以上)、しかも長さが5メートル程度もあったため、愛好者が限られたスポーツであった。1950年代になって、ポリウレタンフォーム製のボードが開発されて扱いやすくなり、サーフィン人口が急速に増えた。現在ハワイをはじめ、南カリフォルニアやオーストラリアでも盛んに行われている。さらにブラジル、ペルー、メキシコ、フランス、イギリス、南アフリカ共和国など、サーフィンのできる条件を備えた国々に普及し、いまでは世界各地の海岸で楽しまれている。
日本では1920年代の初めごろ、板を使っての波乗りが流行したことがあるが、本格的に全国に普及したのは、1960年(昭和35)ごろ在日アメリカ人によって紹介されてからといわれている。
サーフィンは1人でサーフボード(長さ1.5~2.7メートル・幅50~60センチメートル・厚さ7~10センチメートルのポリウレタンフォーム製)の上に乗って両手でバランスをとりながら波乗りするのが一般的であるが、このほかボディーボードサーフィン(ボードに腹ばいになる)、ニーボードサーフィン(ボードに膝(ひざ)立ちで乗る)、用具を用いないボディーサーフィンなどがある。その他の用具としては空気入りゴムマットを利用するもの、カヌーやカヤックを用いるものなどもある。
ボードは身長、体重、経験、サーフィンの種類また個人の好みに応じて選ぶが、オーダーもできる。人造ゴム製のウェットスーツも改良・開発が重ねられ、現在では季節に関係なく、一年中サーフィンができるようになった。
[石井恒男・編集部 2020年4月17日]
競技としてのサーフィンのおもな種目は、ショートボード(長さの規定はないが、通常は180センチメートル前後のものが使用される)、ロングボード(長さ274.3センチメートル以上)、ボディーボード(長さ152.4センチメートル以下)の3種類がある。競技方法は、1ヒート(1試合)2~5人の選手が入水し、形状のよい波を利用したライディングや、波の上でのさまざまな技の演技を行い得点を競う。競技者は適当な位置までパドルして(漕(こ)いで)行き波に乗るが、基本的に、先に乗った者に優先権がある。1ヒートは20~30分程度で、各競技者は時間内に規定の本数(通常2本以上)のライディングを行う。得点は0.1ポイント刻みの10点満点。通常、4~5人のジャッジで採点を行い、1本の得点は各ジャッジの出した最高得点と最低得点を除いた点数の平均点とし、1ヒートの総合得点は上位2本の得点を集計したものになる。また、優先権のある選手に対する妨害などがあった場合、取得した点が集計から除外されたり、減点されるなどのペナルティーが科せられる(2018年時点で日本サーフィン連盟が採用している競技規定による)。
2015年(平成27)には、大原洋人(おおはらひろと)(1996― )が全米オープンで初優勝を遂げたほか、2019年(令和1)には、ワールドサーフリーグ(WSL:World Surf League。プロサーフィンの国際統括組織)開催によるチャンピオンシップツアー(CT:Championship Tour)で五十嵐(いがらし)カノア(1997― )が優勝するなど日本選手が活躍した。
2021年に開催されたオリンピック・東京大会では、開催都市が実施を提案する追加種目5競技18種目の1競技として、サーフィン(ショートボードの男子・女子)が初めて採用された。会場は千葉県釣ヶ崎(つりがさき)海岸(一宮(いちのみや)町)で、男子は五十嵐カノアが銀メダル、女子は都筑有夢路(つづきあむろ)(2001― )が銅メダルを獲得した。
[編集部 2022年2月18日]
1964年、アマチュアサーフィンの国際統括組織として国際サーフィン連盟(ISA:International Surfing Association)が発足し、同年からアマチュアの世界選手権大会であるISAワールドサーフィンゲームスを開催している。日本では、サーフィン競技の発展やサーフィンの普及を図ることなどを目的として、1965年に日本サーフィン連盟(NSA:Nippon Surfing Association)が発足した。翌1966年に千葉県鴨川(かもがわ)で第1回全日本サーフィン選手権大会を開催して以降、ジュニアサーフィン選手権大会、マスターズサーフィン選手権大会などを主催している。NSAはISAに加盟しており、国際大会への選手派遣なども行っている。
[編集部 2020年4月17日]
『牛越峰統著、中和房監修『DVDで超速マスター サーフィン&ボディボードテクニック』新版(2003・成美堂出版)』▽『アンドレア・マクラウド著、藤牧智子訳『サーフィン・ガール入門――世界の女性トップ・サーファーたちが教える波乗りガイド』(2006・ブルース・インターアクションズ)』▽『栗林了二監修『サーフィン・スピードアップ・バイブル――レベルアップにはライディング・スピードは欠かせない』(2006・スキージャーナル)』▽『山森恵子著、Nalu編集部編『サーフィン・レジェンド――サーフィンの歴史を築いた男達の物語』(枻出版社・枻文庫)』
本来は波乗りのことであるが,現在は,浮力のある板(サーフボード)を使って沖合から波打ちぎわまで波乗りをする海のスポーツを意味するのが一般的である。1人でボードのみを使うもののほか,カヌーのようにパドル(櫂)を用いるサーフスキーや4人乗りの大型のサーフボードもある。ポリネシアの人々の古くからの遊びがその起源だといわれ,ハワイ諸島ではとくに活発に行われていた。1778年にハワイを訪れたキャプテン・クックが,そのようすを記録している。その後,1821年にヨーロッパからやってきた宣教師によって不道徳な遊びとして禁止されたが,20世紀に入ってから復活した。とくに,ハワイ出身でオリンピックの水泳100m自由型優勝者カハナモクDuke Kahanamokuが,1920年ワイキキに初めてサーフィン・クラブを作って以来,アメリカ本土でも愛好者が増加した。高波の打ち寄せる海岸ならばどこでもできるので,海水浴場の楽しみの一つとしてしだいに定着した。59年には,それまでの木製のサーフボードに代わって,ウレタンのボードが開発され,安価で軽く使いやすくなって普及に拍車がかかり,アメリカ,オーストラリアを中心に世界に広がった。
日本でも,戦後,在日アメリカ人が湘南海岸でサーフィンを行っていたようだが,本格的な普及は60年代に入ってからである。65年に日本サーフィン連盟が発足し,翌66年千葉県鴨川海岸で第1回全日本サーフィン選手権大会が開催された。そのときの参加者は100人たらずだったが,この新しい感覚のスポーツは若者の夏の風俗として定着し,確実に愛好者を増やしてゆく。それには当時流行した若者たちの音楽であるエレキサウンドが一役かっている。70年代の末には〈サーファー・ルック〉というファッションも現れ,サーフボードやウェットスーツを売るサーフィン産業がスポーツ産業界の一角を占めるようになった。現在の愛好者は推定100万人,そのうち競技人口は1万人ぐらいといわれる。日本サーフィン連盟の主催する競技大会は年間5回ほど開かれ,大きな大会には800名ほどの選手が参加している。
また,1970年にはサーフボードに帆をとりつけたウィンドサーフィンが開発され,サーフィンの行動範囲を波打ちぎわからはるかに広い水面に広げることに成功した。
執筆者:薗田 碩哉
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(吉田章 筑波大学教授 / 2007年)
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