日本大百科全書(ニッポニカ) 「シャーシャ」の意味・わかりやすい解説
シャーシャ
しゃーしゃ
Leonardo Sciacia
(1921―1989)
イタリアの小説家。シチリア島に生まれ、貧困と掟(おきて)をめぐる同島の社会や風土を描き、それを足掛りに現代イタリアの腐敗した社会構造を告発する。初めは『独裁の寓話(ぐうわ)』(1950)、『シチリア、その心』(1952)など、詩作品を発表したが、しだいに小説に転じ、社会変革を志向する硬質の長短編を世に問うた。『シチリアの叔父たち』(1958)、『梟(ふくろう)の日』(1961)、『各人に各人のものを』(1966)などはシチリアのマフィアとその犯罪を主題にしている。しかし『がんじがらめ』(1971)、『葡萄(ぶどう)酒色の海』(1971)、『トード・モード』(1974)などでは舞台をローマに移し、中央政府とシチリア島との権力関係を明るみに引き出そうとする。しばしば未解決の殺人を追って、ミステリー小説の形態をとるが、文学の社会的責務をまっこうに据えた重厚な社会派の作家である。シチリア自治州国会議員を務めた。
[河島英昭]
『千種堅訳『権力の朝』(1976・新潮社)』