日本大百科全書(ニッポニカ) 「アグリジェント」の意味・わかりやすい解説
アグリジェント
あぐりじぇんと
Agrigento
イタリア南部、シチリア自治州アグリジェント県の県都。ラテン名はアグリゲントゥムAgrigentum。人口5万2953(2001国勢調査速報値)。美しい眺望の開けた標高326メートルの丘上に位置する。周辺地域ではアーモンド、オリーブ油、ぶどう酒、岩塩などを産するが、工業の目だった発展はなく、経済活動は停滞気味である。ただ、コンコルディアの神殿跡をはじめ、数多くの遺跡が存在し、観光地としては将来性がある。ノーベル賞作家ピランデッロの生地としても知られる。
[堺 憲一]
歴史
紀元前581年ごろ、シチリア島南東岸のギリシア植民市ゲラによって建設され、アクラガスAkragasとよばれた。前5世紀に僭主(せんしゅ)テロンのもとで発展し、カルタゴの植民市ヒメラを破って通商の要地として繁栄、シラクサに次ぐ大都市(人口20万)となった。良馬を産し、オリンピア競技の優勝者を輩出した。詩人ピンダロスがアグリジェントの繁栄を賛美している。前406年カルタゴに攻略され、のち一時復興するが、ポエニ戦争中にローマの支配下に入り、アグリゲントゥムとよばれた。その後も織物、硫黄(いおう)を産したが繁栄は取り戻せず中世に至り、9世紀にはイスラム領となる。11世紀にはキリスト教勢力に奪回され、司教区が置かれた。中世からはジルジェンティGirgentiとよばれ、1927年に現在の呼称となった。
[松本宣郎]