ジェームズホタテガイ
じぇーむずほたてがい
James' scallop
[学] Pecten jacobaeus
軟体動物門二枚貝綱イタヤガイ科の二枚貝。地中海に産する貝で、食用とされている。殻長12センチメートル、殻高11センチメートルに達する。殻は扇形、左殻は平らで褐色、右殻はわずかに膨らんで白い。殻表には19条内外の太い放射肋(ろく)がある。ジェームズホタテガイの名は、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステラの寺院に葬られている聖ジェームズ(聖大ヤコブ)にちなむものである。本種は、彼を題材とした教会画に描かれるだけでなく、12世紀ごろ最盛期を迎えたこの地への巡礼の紋章としても用いられた。またさらに、ボッティチェッリの『ビーナスの誕生』に描かれた貝のモチーフになったのも本種である。
[奥谷喬司]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
ジェームズホタテガイ
Pecten jacobaeus; St. James' scallop; pilgrim shell
軟体動物門二枚貝綱イタヤガイ科。殻長 8.5cm,殻高 7cm,殻幅 2.5cm。殻は扇形で殻頂の前後両側はまっすぐである。左殻は褐色で平ら,右殻は白色でふくらむ。殻頂から太くて低い明瞭な放射肋が 19本ほど走っている。地中海産。聖大ヤコブ (聖ジェームズ) が葬られているスペインのサンチアゴ・デ・コンポステラ大聖堂へ巡礼が詣で,本種をその記念として持帰ったことによりその名がついた。 S.ボティチェリの『ビーナスの誕生』で,ビーナスが乗っている貝は本種である。また,中世の十字軍兵士が従軍の徽章として用いた。
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世界大百科事典(旧版)内のジェームズホタテガイの言及
【イタヤガイ(板屋貝)】より
…近似種のハナイタヤガイP.sinensisは殻はやや小型で左殻の膨らみはいっそう強い。地中海のジェームズホタテガイ(ジェームズイタヤガイSt.James shell)P.jacobaeusは巡礼貝(英名pilgrim shell,イタリア名capa santa)ともいわれ,十字軍の従軍記章にされたので名高く,またボッティチェリの絵画《ビーナスの誕生》でビーナスが乗っている貝もこの種である。【波部 忠重】。…
【貝】より
…この巻貝の左巻きのものは何十万個に一つというほどまれなのでとくに高価で,同じ重さの金と交換されるという。地中海産のジェームズホタテガイ(ジェームズイタヤガイ)は古くから図案や紋章にとり入れられ,十字軍の従軍記章にもなったことで名高く,エルサレムへいった兵士がこれを従軍の印として故国へもち帰ったので巡礼貝の名がある。 高僧の回国譚には貝にまつわる種々の物語が残っている。…
※「ジェームズホタテガイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」