日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジューベ」の意味・わかりやすい解説
ジューベ
じゅーべ
Louis Jouvet
(1887―1951)
フランスの俳優、演出家。ブルターニュのクロゾンに生まれる。コンセルバトアール受験に二度失敗、素人(しろうと)劇団にいたが、1911年以来コポーに師事し、1913年からビュー・コロンビエ座で俳優として活躍するかたわら、演出など舞台各部門の仕事に取り組んだ。1923年に独立してシャンゼリゼ劇場で自ら一座を結成、ジュール・ロマンの『クノック』などで大成功を博し、1927年には、デュラン、バティ、ピトエフとともに「4人連盟(ル・カルテル・デ・カトル)」をつくり、新演劇運動の中心的存在となった。1928年の『ジークフリート』以来ジロドゥーのほとんどの作品を取り上げて劇界に新風を送り、1934年には本拠をアテネ座に移し、モリエールの『女房学校』新演出で大当りをとった。第二次世界大戦中はナチスを逃れてスイス、南アメリカなどを巡業した。戦後もサルトルの『悪魔と神』を演出するなど幅広い演劇活動を展開したが、心臓麻痺(まひ)で急死。独特な容貌(ようぼう)としゃがれ声で喜劇味ある演技に優れ、日本でも映画『女だけの都』『どん底』『舞踏会の手帖(てちょう)』『北ホテル』などの名演によって知られている。
[石澤秀二]
『ルイ・ジューベ著、鈴木力衛訳『演劇論――コメディアンの回想』(1952・人文書院)』