ジークフリート(読み)じーくふりーと(英語表記)Siegfried ドイツ語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジークフリート」の意味・わかりやすい解説

ジークフリート
じーくふりーと
Siegfried ドイツ語

ゲルマン民族英雄伝説に現れる優れた英雄。ジークフリート伝説には二つの流れがあって、一つは北欧伝説の主神オーディンによって寵愛(ちょうあい)されたウォルスングの家系に連なるジークルトにまつわるものであり、アイスランド叙事詩エッダ』に登場する。もう一つは古くからドイツ一円に存在する断片的な英雄譚(たん)であり、それらがほぼ一つになって生まれたのが、『ニーベルンゲンの歌』の第1部に登場するジークフリートである。そして彼はやがてワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環(ゆびわ)』(1853~70)の第3部、第4部の主人公となる。『ニーベルンゲンの歌』は13世紀初めごろの作品であるが、ここに登場するジークフリートはライン川下流ネーデルラントの王子。アルブリーヒという小人から「隠れ蓑(みの)」Tarnkappeを奪い12人力を得て、悪竜を退治し、全身にその血を浴びて皮膚が角質化し、不死身の勇士となった。しかしこのときたまたま背中菩提樹(ぼだいじゅ)の葉が1枚落ちてきてとどまり、そのためにそこだけが致命的な弱点となる。やがて義兄の臣ハーゲンによって、泉に身をかがめたときにそこを刺されて死ぬ。ジークフリートがドイツ国民の英雄的存在となっていることは、第二次世界大戦を前にして、フランスの「マジノ線」に対して築いた要塞(ようさい)線を「ジークフリート線」と名づけたことからもわかる。劇作としてはジロドゥーの『ジークフリート』(1928)がある。

[船戸英夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジークフリート」の意味・わかりやすい解説

ジークフリート
Siegfried

ゲルマン民族の英雄。アイスランドの『エッダ』では,シグルズ Sigurðrと呼ばれる。叙事詩『ニーベルンゲンの歌』の前半部の主人公。竜退治の際,返り血を浴びて不死身となり,ブルグンド王とブルーンヒルトの結婚に協力して王の妹クリームヒルトを得るが,王妃恨みを買い,背中の唯一の弱点をねらわれて死ぬ。

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