日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジルコン系顔料」の意味・わかりやすい解説
ジルコン系顔料
じるこんけいがんりょう
セラミック顔料のなかで、ジルコンZrSiO4を母格子とし、これに主として遷移元素第1群および希土類の陽イオンが固溶して発色するもので、バナジウムが固溶したトルコ青、プラセオジムのプラセオジム黄、鉄のサーモンピンク、コバルトとニッケルが固溶したジルコングレーなどがおもなものである。酸化スズ系顔料、ジルコニア系顔料とともに、新しく開発されたセラミック顔料である。ジルコン系顔料の特徴は、使用する釉(ゆう)の組成に、あまり厳しい制限はなく、かなり広く種々のタイプの釉に使用でき、他の顔料との混色が広く可能で、このためセラミック顔料のカバーできる色が非常に豊富になった。最近新しいジルコン系顔料として、硫セレン化カドミウムCd(SSe)の赤をZrSiO4でコーティングしたものが開発され、陶磁器に一部使用され注目されている。
[大塚 淳]
一般的製法
ジルコン系顔料は、ジルコニア(酸化ジルコニウム)ZrO2とシリカ(二酸化ケイ素)SiO2のほぼ等モル混合物に、発色成分の酸化物等を添加し、さらに数種の鉱化剤を併用することによって800~900℃の焼成で得られる。鉱化剤を用いずにZrO2とSiO2とからZrSiO4を生成させるには1500℃以上の加熱を必要とする。ジルコンの調製は、鉱化剤の相乗効果が顕著に示される有名な例である。他の調製方法に、天然のZrSiO4をアルカリの塩類等で一度溶融分解し、活性なZrO2とSiO2とにし、これに発色成分を加え、ふたたびZrSiO4の母格子を生成させる方法がある。
[大塚 淳]