日本大百科全書(ニッポニカ) 「スジモンニセスズメ」の意味・わかりやすい解説
スジモンニセスズメ
すじもんにせすずめ / 筋紋偽雀
striated dottyback
[学] Pseudochromis striatus
硬骨魚綱スズキ目メギス科メギス亜科に属する海水魚。日本では石垣島と西表島(いりおもてじま)の海域から知られ、世界では台湾、フィリピンにも分布する。体は著しく細長く、側扁(そくへん)する。体高は背びれの起部で体長の約23~25%。頭部背縁は緩く湾曲する。目が著しく大きく、体長の10~13%。吻長(ふんちょう)は眼径より著しく短い。口は普通大で、上顎(じょうがく)の後端は瞳孔(どうこう)の前縁付近下に達する。上顎には前部に2~3対(つい)の湾曲した大きい犬歯状歯があり、内側には前方に4~5列、側方に1列の小さい円錐歯(えんすいし)がある。下顎には前部に2~3対の上顎のそれらと同様の歯があり、内列には前方に4列、側方に1列の円錐歯がある。側線は2本で、前方のものは鰓孔(さいこう)の上端から始まり、上昇して背びれ軟条始部下付近から体の背縁に並行して、背びれ11~16軟条下方で終わり、その間の側線有孔鱗(ゆうこうりん)数は21~26枚。後方の側線は尾柄(びへい)中央部を走り、その側線有孔鱗数は7枚。背びれは胸びれ基底上方から始まり、鋭くやや細長い3棘(きょく)と25~26本の軟条からなる。背びれの棘部と軟条部の間に欠刻(切れ込み)がない。臀(しり)びれは3棘15軟条で、第2棘はもっともじょうぶで、鋭い。頭部、項部(背びれ起部より前の後頭部)、胸、腹部の下面、胸びれ基底、尾びれの鱗鞘(りんしょう)(基底付近を覆う鱗(うろこ))の後部、前方の側線より上にある鱗は円鱗で、それ以外は櫛鱗(しつりん)。尾びれの後縁は円形。体はやや桃灰色で、前腹部は桃灰色から赤灰色。体側面に6~10本の暗灰色の縦帯がある。尾びれの基底部に半円形の大きい黒斑(こくはん)がある。水深15~37メートルのサンゴ礁の小さい穴、割れ目、くぼみの中などにひそむ。小形種で、最大体長は3.2センチメートルである。
本種が属するメギス亜科は、背びれ棘と臀びれ棘が2~3本で、棘部と軟条部の間に欠刻がなく、側線が2本に分かれているのが顕著な特徴である。また本種はニセスズメ属に属するが、背びれ棘が3本であること、上下の側線有孔鱗数が少ないこと(上が36枚以下、下が15枚以下)などで、メギス属やオビキヌハダタナバタメギス属と容易に区別できる。
[尼岡邦夫 2022年7月21日]