改訂新版 世界大百科事典 「スタンダードオイル会社」の意味・わかりやすい解説
スタンダード・オイル[会社]
Standard Oil Co.
かつてアメリカ石油市場を支配したスタンダード・オイル・トラストの中核会社で,現在のエクソン社,シェブロン社,モービル・オイル社などの石油企業の前身。
起源は,J.D.ロックフェラーが1862年にオハイオ州クリーブランドで始めた石油精製工場であり,70年に同業数社を糾合してオハイオ・スタンダード社Standard Oil Co.(Ohio)を設立した。当初は,リスクの大きい原油探鉱・生産には手を出さずに,もっぱら輸送部門の独占を通じて,原油生産の支配と精製業者の統合を行った。とくに,鉄道会社との間に独占的・排他的石油輸送契約を結び,また油田と積出駅を結ぶパイプラインを独占するなどの方法で,他の石油業者を圧倒し,多くの業者を傘下に収めて,急速にアメリカの石油市場を支配した。1882年には,約40の精製業者およびパイプライン会社とトラスト契約を結ぶことによって,スタンダード・オイル・トラストを結成し,アメリカの精製能力の80%,パイプラインのほとんど全部が,スタンダード・グループの支配下に帰した。1904年には,アメリカ国内製油所による処理原油の85%以上を,精製,販売するに至った。また,20世紀に入るころから急速に海外事業をも拡大しはじめ,1911年時点で海外市場における販売シェアは60%近くに達していた。
しかし,1890年にアンチ・トラスト法であるシャーマン法が成立し,ロックフェラーはトラスト協定の放棄を余儀なくされ,99年ニュージャージー州法人としてジャージー・スタンダード社Standard OilCo.(New Jersey)を持株会社として,トラスト傘下のすべての石油会社の株式を引き継ぎ,これを各州の子会社に割り当てるという形で,事実上のトラスト支配を継続した。しかし,1911年,この方式による支配もシャーマン法違反であるとして解散を命じられ,スタンダード・オイル・グループは,ジャージー・スタンダード(現,エクソン・モービル社),スタンダード・オイル・オブ・カリフォルニア(現,シェブロン・テキサコ社),スタンダード・オイル・オブ・ニューヨーク(のちのモービル社,現エクソン・モービル社)を含む33の独立企業に分割された。
執筆者:田中 隆之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報