ステゼル(読み)すてぜる(その他表記)Jean Stoetzel

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ステゼル」の意味・わかりやすい解説

ステゼル
すてぜる
Jean Stoetzel
(1910―1987)

フランスの社会心理学者。パリ大学、エコール・ノルマル・シュペリュール(高等師範学校)卒業。ボルドー大学教授を経てパリ大学教授。アメリカの社会心理学の影響を強く受けて、フランスにおける態度世論の実証的研究のパイオニアでかつオーソリティーとなり、フランス世論調査所(IFOP:Institut Français d'Opinion Publique)の設立と発展に寄与し、長年にわたって所長職を務めた。1952年(昭和27)に来日し、日本青年の価値態度に関する実態調査を行い、その調査結果に基づいて『菊と刀なき日本』(1954年、原題『菊と刀なき青年―戦後日本青年の態度に関する研究―』)を著した。その著書のなかで、戦後日本の価値体系について、天皇の神格否定宣言と戦力不保持の憲法第9条とによって、「菊と刀」に象徴化された戦前の価値体系が根本的に変容し、戦後派青年は合理的な生き方や考え方をするようになったことを認めながらも、他者への依存心が強いなど、いまだ十分に自立せず、成熟していない点を指摘している。その他の著書に『世論の理論』(1943)、『社会心理学』(1963)、『現代価値観―ヨーロッパ調査―』(1983)などがある。

[岡田直之]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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