改訂新版 世界大百科事典 「スパティフィルム」の意味・わかりやすい解説
スパティフィルム
Spathiphyllum
サトイモ科の常緑多年草で,熱帯アメリカに35種,フィリピン,モルッカ諸島などに3種が分布する。ササウチワS.patinii(Hogg.)N.E.Br.は1912年に渡来した。コロンビアから欧米に導入されたというが,原産地はよくわからない。日陰でもよく生育し,観賞温室で栽培されている。純白色の仏焰苞(ぶつえんほう)は長さ8~10cm,先が細くとがった長卵形で芳香がある。鉢物として栽培が多いのは,交雑種のマウナ・ロアcv.Mauna Loaで,仏焰苞は幅広く丸弁で,長さ15~20cmになる。実生苗は変異が多いので,良系統を選抜して,茎頂培養で大量に繁殖させる。スパティフィルム・フロリブンドムS.floribundum(Lind.et André)N.E.Br.はコロンビア原産の小型種で,葉に光沢がなく,仏焰苞は広卵形で,肉穂花序が目だつ。強い芳香がある。またスパティフィルム・コックレアリスパーツムS.cochlearispathum(Liebm.)Engl.は花茎が1m以上の大型種で,仏焰苞は淡黄緑色で芳香が強い。この仲間は寒さにやや弱いので,冬は10~12℃以上に保つ。夏の冷房も好まない。
執筆者:高林 成年
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報