セズマリア
sesmaria
中世ポルトガルおよび植民地時代のブラジルでおもに利用された未耕地の無償配分制度。ポルトガルでは1375年にさかのぼり,1人が耕作できる規模の土地にすぎなかったが,ブラジル植民地では,現在に至るまで大土地所有制の契機となるほど大規模の土地が配分された。各カピタニア(カピタニア制)の責任者ドナタリオは,開発を促進するため自費で入植者を誘致し,彼らに領内の公有地を条件付きで無償配分した。配分者と受領者の双方をセズメイロsesmeiroといい,下付された土地をセズモsesmoという。受領者は通例2年以内に耕作を行い,要塞を兼ねた自己の邸宅を建設し,境界を明示しなければならなかった。王室は独立政治勢力の出現と土地生産性の低下を懸念して,1695年には規模を4レグア×1レグア(1レグアは6.0~6.6km)に,97年には3レグア×1レグアに制限し,99年には未耕地の没収を定めた。18世紀には,土地をもたない農民と遊休地の存在が指摘されている。1850年に廃止された。
執筆者:山田 睦男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
セズマリア
sesmaria
ブラジル植民地時代の農牧地。封建的領地制カピタニアのドナタリオ (領主) が農牧業を営もうとするキリスト教徒に分譲した私有地。1人あたり3平方レグアと規定されていたが,情実でいくつものセズマリアを取得し,数十平方レグアの広大な農場もあった。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内のセズマリアの言及
【カピタニア制】より
…34年から36年にかけて,ブラジル植民地は15の世襲カピタニアcapitaniaに分割され,12人のドナタリオdonatárioまたはゴベルナドールgovernadorと呼ばれる世襲領主に与えられた。領主は,領域内で王権を背景に民事および刑事裁判権をもち,法律を制定し,海岸と可航河川沿いに町vilaを建設し,聴訴官ouvidor,公証人,司法職員を任命する権利をもち,王の土地を入植者に無料分譲(セズマリアsesmaria)する義務を負った。また,領主は,自己の私有地として,海岸に面する間口10レグア(約60km)の土地を確保することができ,その土地は十分の一税を免除され,さらに,領域内で徴収される十分の一税の10%,ブラジル材の代金の5%,すべての手数料と五分の一税の10%,水車使用料,海塩代金,公証人事務所家賃,渡し船収入などの全額,輸出税の1%を所得として与えられた。…
【カピタニア制】より
…34年から36年にかけて,ブラジル植民地は15の世襲カピタニアcapitaniaに分割され,12人のドナタリオdonatárioまたはゴベルナドールgovernadorと呼ばれる世襲領主に与えられた。領主は,領域内で王権を背景に民事および刑事裁判権をもち,法律を制定し,海岸と可航河川沿いに町vilaを建設し,聴訴官ouvidor,公証人,司法職員を任命する権利をもち,王の土地を入植者に無料分譲(セズマリアsesmaria)する義務を負った。また,領主は,自己の私有地として,海岸に面する間口10レグア(約60km)の土地を確保することができ,その土地は十分の一税を免除され,さらに,領域内で徴収される十分の一税の10%,ブラジル材の代金の5%,すべての手数料と五分の一税の10%,水車使用料,海塩代金,公証人事務所家賃,渡し船収入などの全額,輸出税の1%を所得として与えられた。…
【ラテン・アメリカ】より
…40年にポルトガルがスペインから離脱するころには,オランダは七つのカピタニアに166の砂糖工場をもっていたが,その後ポルトガル人の反乱が起こり,54年にレシフェのオランダ人は降伏した。 ブラジルには広大な土地が存在したが,スペイン領アメリカ植民地の高文化圏(メキシコ,ペルー)のように多数の定着農耕民が存在していなかったため,[セズマリア]制によって,資力をもつ入植者に大区画の土地が与えられ,内陸から[バンデイラ]によって狩り集められたインディオや,アフリカから連れてこられた黒人からなる奴隷が労働力とされた。大規模生産によって,効率と収益率を引き上げようとしたため,砂糖や綿花などのヨーロッパ市場向けの特定商品のみが栽培された。…
※「セズマリア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」