日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゼンナート」の意味・わかりやすい解説
ゼンナート
ぜんなーと
Daniel Sennert
(1572―1637)
ドイツの医師、化学者。ブレスラウ(現、ポーランドのブロツワフ)に生まれ、1602年ウィッテンベルク大学医学教授となった。生命現象を化学作用ととらえ、化学的医薬を重視するパラケルスス派の医化学者(イアトロケミスト)であったが、そのような薬物への過信を戒め、伝統的なガレノス医学の四体液説との折衷を図った。化学理論においてもパラケルススの三原質説(硫黄(いおう)・塩・水銀)をとったが、それらは究極的にはアリストテレスの四元素(火・気・水・土)からなるとして、両説を融合しようとした。また原子論的な見方をも取り入れ、蒸留・溶解・凝結などの化学的変化を物体の最小粒子への分解と再結合によるとしたが、徹底した機械論の見地にたつことはなかった。
[内田正夫]