タイ美術(読み)タイびじゅつ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タイ美術」の意味・わかりやすい解説

タイ美術
タイびじゅつ

タイの美術はその歴史が示すように,周辺の民族から受容した美術をさまざまに展開させてきている。6~7世紀頃に中部タイに興起したモン族のドゥバラバティ文化はインドから輸入されたもので,タイ美術の初期を飾る。この時代の彫刻は仏教系統のものが中心で,ガンジス川流域のサールナート系統の美術の影響を受けて展開している。 10世紀初め頃,カンボジアのクメール王国に支配された当時の文化は,ロッブリー遺跡の建築に残っている。また南方からの影響としてはスマトラから伝えられたシュリービジャヤ美術 (→インドネシア美術 ) の流行がある。この美術は南部タイで長く続けられ,その系統をシュリービジャヤ様式と称し,青銅仏像彫刻が多い。 13世紀になると中部タイにスコータイ王国が出現し,北部にはチエンマイ王国も独立していた。これらの地方ではインド系の美術をビルマから輸入して仏教美術が繁栄した。 14世紀の半ば頃にはスコータイに続いてアユタヤ王朝が成立した。この地の仏教は盛大で現在でも巨大な建築の遺構アユタヤに残されている。この王国の美術はクメール系の美術の影響を強く受けているが,タイ美術のなかでもスケールの大きい表現を確立している。アユタヤ王朝の首都は 18世紀後半期にビルマ軍の侵入にあって壊滅し,現在のバンコクに遷都することとなった。バンコク時代の美術は形式化して,繊細な表現となり,タイ美術の衰退期を示している。

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世界大百科事典(旧版)内のタイ美術の言及

【タイ】より

…もう一つは〈純タイ期〉と呼び,タイ族が南下・移住し,タイに定住して以降の美術をさす。タイ美術の一般的特徴は,歴史を通じて,古い時代にさかのぼればさかのぼるほど,その性格がインド的であるという点にある。インドからの影響を濃厚に受けながら育ち,それがしだいにタイ独自の美術に発展していったのである。…

※「タイ美術」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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