日本大百科全書(ニッポニカ) 「タテマエとホンネ」の意味・わかりやすい解説
タテマエとホンネ
たてまえとほんね
建前(家の棟上げ、表向きの方針、原則)と本音(本当の音色(ねいろ)、本心)。理念的な文化と制度的な文化、規範的な行動と現実的な行動との対照をさしている。社会学者作田啓一(さくたけいいち)(1922―2016)によれば、普通、社会体系の外側にある理念的文化(あらゆる状況を通じて意味の一貫性を保持しようとする文化)が、タテマエとして尊重されるが、それは、社会体系内の状況からの要請を入れて現実と妥協し、制度的文化となる。生活上の実際の行動を動機づけるのは、ホンネとしての制度的文化のほうである。日本のような後者が相対的に優位を占める社会では、タテマエ・ホンネ間の相互浸透や両者の使い分けが顕著であるという。文化人類学者我妻洋(わがつまひろし)(1927―1985)に従えば、内面的な一貫性に価値を置くアメリカ人も、実際にはアド・ホックな(その場限りでの)解決法をみつけようとするし、また二重基準を設けて現実のタテマエ化を図っている。しかし英語にタテマエ・ホンネにあたる語はない。
[濱口恵俊]
『作田啓一著『価値の社会学』(1972・岩波書店)』▽『我妻洋著『社会心理学諸説案内』(1981・一粒社)』▽『南博編『日本人の人間関係事典』(1980・講談社)』