改訂新版 世界大百科事典 「タバコシバンムシ」の意味・わかりやすい解説
タバコシバンムシ
Lasioderma serricorne
甲虫目のシバンムシ科の昆虫。世界に広く分布する。成虫の体は黄赤褐色で2~3mm。触角は鋸歯状。英名はtobacco beetle,またはcigarette beetle。乾燥させた葉タバコや巻きタバコが被害をうけたことからその名がつけられたが,食品類,種子,動物標本など乾いた動植物質のものを広く食害する。成虫は日没ごろから活発に歩行,あるいは飛翔(ひしよう)し,幼虫の食餌となるものに産卵管を挿入して2~3個の卵を並べて産みつける。1匹の産卵数は10~60個。卵の期間は6~12日,幼虫期間は25~50日であるが,越冬する幼虫では6ヵ月以上となる。幼虫は白色円筒形で軟毛が密生する。胸脚は小さい。成熟した幼虫は食物や糞を唾液で固めて繭をつくり蛹化(ようか)するが,蛹化するまでに通常は5回脱皮を行う。さなぎの期間は7~18日。1年に1~3世代を繰り返す。近年,畳床に潜り込んでいる幼虫にシバンムシアリガタバチが寄生し,このハチが人を刺すことでいっそう注目されるようになった。
執筆者:林 長閑
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報