日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ターリク・ブン・ジヤード
たーりくぶんじやーど
āriq b. Ziyād
(?―720)
ムーサーと並ぶイベリア半島征服軍の指揮官で、ベルベル人。ウマイヤ朝のイフリーキヤ(リビア以西の北アフリカ)州総督ムーサーのマウラー(解放奴隷)で、彼に仕え、タンジール(タンジャ)駐屯軍の長であった。711年、7000の兵のムスリム軍(イスラム教徒、大部分はベルベル人)を率いてスペインに渡り、ロドリゴ王の西ゴート王国を滅ぼした。翌年、出征してきたムーサーと競いながら、イベリア半島を征服した。カリフのアル・ワリード1世の帰国命令により、ムーサーとともに莫大(ばくだい)な戦利品、捕虜を携えてダマスカスに凱旋(がいせん)し、同地で没した。なおジブラルタルは、ターリクの山ジャバル・アッターリクJabal al-āriqの転訛(てんか)した地名である。
[私市正年]