日本大百科全書(ニッポニカ) 「タール火山」の意味・わかりやすい解説
タール火山
たーるかざん
Taal Volcano
フィリピンのルソン島にある活火山。マニラの南方約50キロメートルの場所に位置する。標高400メートル。おもに玄武岩と安山岩からなる成層火山で、直径約20キロメートルのカルデラ湖(タール湖)があり、その中央に5キロメートル径の火山島がある。この火山島自身も水を蓄えた火口湖をもっており、タール湖とつながっている。
1572年以来34回も噴火し、大きな被害を出した。最近では1965年9月に大きな噴火をした。初めストロンボリ式噴火で開始したが、すぐに水蒸気爆発に移化し、火山灰が20キロメートルも上昇した。しかし同時に発生した横殴りの噴煙(ベースサージ)が高速で湖を渡り、湖岸の集落を襲い、死者190人を出すなど被害を与えた。同様の噴火で1911年には犠牲者が1300人に達した。噴火は1970年まで断続的に続き、1976・1977年にも発生した。現在も、活発な地震活動や地熱現象などが継続している。
[中田節也]
『荒牧重雄・白尾元理・長岡正利編『空からみる世界の火山』(1995・丸善)』