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火山 かざんvolcano

翻訳|volcano

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

火山
かざん
volcano

火山作用によって地球内部から放出された溶岩火山灰火山礫などの火山噴出物が噴出口(火口)付近に堆積して生じた地形。通常は山地のように高まりをなすが(→),爆発や陥没によって凹地をなすこともある。その山頂から山麓までを火山体といい,火山体が 1回の噴火で形成される単成火山と,休止期を挟んで繰り返される噴火を経てできる複成火山とに分けられる。複成火山は溶岩流火山砕屑物の重なり合った成層火山で,円錐形の火山体を形成することが多い。日本では最も多く,富士山が代表例。火山の形状には,火山砕屑物だけからなる砕屑丘,粘性の強い溶岩からなる溶岩円頂丘,硬い溶岩が柱状に押し出された火山岩尖,流動性の溶岩によってつくられた楯状火山,爆裂によってできたマール,直径が約 1.5kmより大きい凹地のカルデラなどがある(→火山地形)。

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知恵蔵の解説

火山

マグマが地下から噴出する地点。また、噴出した結果として地表に形成される地形のこと。分布は地球上の特定の地域に集中。日本列島を含む環太平洋造山帯にみられるように、海洋プレートが地下に沈み込む場所では、マグマ島弧・陸弧型火山と大陸地殻をつくる。新しいプレートが生産される海嶺では、マグマがプレート上部に噴出・貫入し、海底に海嶺型火山と海洋地殻をつくる。プレートの境界から離れた場所でもホットスポット火山ができる。噴火の継続性から、1回だけで活動をやめてしまう単成火山と、休止期をおいて噴火を繰り返す複成火山に分けられる。

(井田喜明 東京大学名誉教授 / 2007年)

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デジタル大辞泉の解説

か‐ざん〔クワ‐〕【火山】

地下のマグマやその生成物が地表に噴出して生じた地形。マグマの性質により噴火の形式が異なり、形態もそれによって山状をなすなど多様。→活火山常時観測火山

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百科事典マイペディアの解説

火山【かざん】

地下のマグマが地表に噴出するために生じた地形や構造。噴火口を中心として高まった地形であることが多い。負の地形としてはマールカルデラ等。噴出するマグマの種類や性質により,火山の形態・構造が変化する。
→関連項目噴火溶岩

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岩石学辞典の解説

火山

火山とは地殻に開いた部分から熱いガス,熔岩,火山砕屑物などが放出する現象と,放出された物.火山は噴火によって噴火地点付近に生じた地形であって,地下深部の存在するマグマなどの初生物質が地殻の弱点に沿って上昇し地表に現われる通路のうち地表付近の部分をいう[渡辺編 : 1935,片山ほか : 1970].火山(volcano)の語源はティレニア海(Tyrrhenian Sea)にあるヴルカノ(Volcano)島によっている.ティレニア海はイタリア西部のコルシカ,サルディニア,シシリイの3島に囲まれた地中海の海域である.古代ローマ神話の火と鍛冶の神(Vulcan)のVulcanusによるラテン語のvolcanusに由来する.

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世界大百科事典 第2版の解説

かざん【火山 volcano】

地球内部には高温の溶融物質(マグマ)が一時的にたまっているいわゆるマグマ溜りがあり,ここから上昇したマグマが地表に噴き出して噴火の現象が起こる。噴火によって地表に生じた特有の内部構造をもつ地形を火山という。この意味を強調するときは火山体ともいう。単に地球内部から地表へマグマが噴出する地点という意味にも火山ということばが使われる。火山の大多数は火口周辺に火山噴出物が堆積した結果として形成されるが,カルデラマールのように陥没や爆発などにより既存物質が失われてその形態ができたものもある。

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大辞林 第三版の解説

かざん【火山】

地下のマグマおよびそれに由来する岩石・ガスなどが地表に噴出する地点、およびその結果として生ずる特徴ある構造。噴出物の高まり(火山体)、爆発・陥没による凹地、割れ目などの地形をつくる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

火山
かざん
volcano

地下にあった高温のマグマ(岩漿(がんしょう))や火山ガスが地表へ噴出し、溶岩やその破片(火山砕屑物(さいせつぶつ))が、火口の周囲に堆積(たいせき)してできた地形。この噴出現象は噴火とよばれ、マグマに溶け込んでいた揮発性成分が激しく泡立つか、地下水がマグマの熱で温められて爆発するためにおこる。マグマの物理的、化学的性質が多様なので、噴火様式や火山形態も多彩であり、また、地形上、高まりではなく、窪地(くぼち)をなすこともある。
 噴火は、種々の自然現象中でも、もっとも凶暴で、かつ美しく、限りない恐怖と驚異の念をおこさせる。噴火の記録は、ヨーロッパではギリシア時代の紀元前693年のイタリアのエトナ火山噴火、日本では553年(欽明(きんめい)天皇14)の熊本県の阿蘇(あそ)山噴火までさかのぼり、さらに、諸国の神話や伝説にも火山活動はよく登場するが、昔の人々は火山の猛威の前にただひれ伏し、神に祈るほかはなかった。
 火山に近代科学のメスが入れられたのは、西洋では約2世紀前、日本では1世紀余り前の明治維新からである。しかも、19世紀初頭でさえ、ドイツの地質学者アブラハム・ウェルナーは、地下の石炭の自然燃焼でその上にある岩石が溶け、あふれ出て火山を築くと考えた。当時イタリアの地球科学者たちは、地球の内部は大部分が液状のマグマで満たされており、それがときどき地表にあふれ出ると考えた。いまは後者の説さえ否定されている。つまり、火山学は過去1世紀間に急速に進み、人々は火山に対する認識をしだいに改めてきた。現在では、火山そのものの本質を理解し、その恵みを活用し、害を除くためだけではなく、地球内部のようすを探り、マグマのでき方や地震のおこり方などを究明する手掛りを与える「地球の窓」としても、火山はますます盛んに研究されている。
 地球の歴史は約46億年にわたり、地球の表面を覆う地殻はおもに火山活動でつくり出されたものであり、さらに、それを覆っている海洋も大気も、火山活動が原因で生み出されたと考えられる。しかも、その火山活動が衰える気配はなく、地殻、海洋、大気も成長中といえよう。なお、近年、宇宙探査の進展で、太陽系の地球に似た他の惑星(火星、金星、水星)や、地球の衛星の月でも、20億~30億年前までは大規模な火山活動が行われたこと、また、木星の衛星のイオでは火山活動がまだ続いていることなどが確かめられている。[諏訪 彰・中田節也]

火山活動と噴火

 マグマの地球内部での生成、移動、噴出とそれらに伴う諸現象を火成活動と総称し、そのうち、地下浅所への上昇、地表や空中への噴出とそれに伴う諸現象を火山活動と総称するが、狭義の火山活動は噴火活動と同じである。広義の火山活動に起因する諸現象を火山現象と総称し、噴火、噴気活動をはじめ、火山性震動、地殻変動、地磁気・重力の変化、温泉作用、変質作用、鉱化作用などを含む。[諏訪 彰・中田節也]
マグマの生成・上昇
半径約6400キロメートルの地球の内部でのマグマの生成や上昇の仕組みなどは、おおよそ理解されるようになってきた。マグマはつねにマントル中に存在するわけではなく、地殻下部~マントル上部(地下数十キロ~数百キロメートル)で、温度と圧力の均衡が破れ、固体のマントル物質が局所的に溶けて生じる。たとえば、マントルは、上部は1000℃程度、底部は数千℃もの高温ながら、上部で1万気圧程度、底部では百数十万気圧もの高圧下にあるので、固体であるが、局所的に温度が上がる(加熱される)か、圧力が下がれば(マントル物質が上昇すれば)、溶けてマグマが形成される。また、水分などの揮発性成分が加われば、マントル物質の溶け出す温度が下がる。このためプレートの沈み込みに伴って水がマントルに供給されると、マグマが生じやすくなる。マグマは徐々に集合し、周囲の固体より密度が小さいので、浮力でしだいに上昇する。溶融の割合が少ないときは、マグマを含んだ周囲のマントルも、いっしょになって、プリューム(巨大な逆雫(しずく)状の塊)として上昇し、圧力低下によってマグマの量が増す。地殻の下部にプリュームがぶつかることによって、マグマだけが浮力によって分離し、地殻中を上昇すると考えられている。その際、プリュームやマグマの熱によって地殻下部の物質が溶けて新たなマグマが形成され、両マグマは混ざりあって地殻中を上昇すると考えられる。
 地球上の大多数の火山は、海洋プレートが生み出される中央海嶺(かいれい)と、それが大陸プレートの下へ斜めに押し込まれていく地帯に分布する。前者では、マントル物質がマントル対流で上昇し、圧力が減るために、溶けてマグマを生じ、また後者では、沈み込むプレートから水が上部のマントルに供給されてマグマが生じる、と考えられる。また、ハワイ諸島の火山列などは、熱源が一定の位置にあり、その上を移動するプレート上に火山がつくられている。この熱源がホットスポットとよばれ、そこではマントルのプリュームが地球の深部から上昇してきて、圧力低下によってマグマができている。[諏訪 彰・中田節也]
噴火=マグマの噴出
多くの火山での個々の噴火は、いったん地殻浅部にマグマが蓄えられてできたマグマ溜(だま)りから、マグマが上昇してくることによっておきている。マグマ溜りの頂部が地下数~10キロメートルにあることが科学的に確かめられた火山も多い。地殻を上昇するマグマが途中でいったん停滞する理由としては、浅くなるほど小さくなる地殻の岩石の密度とつり合うことが大きな原因と考えられる。このように浅い溜りで長期間滞在すると、マグマは周囲の岩石に熱を奪われ、温度が徐々に下がり、その中に種々の結晶ができてくるが、ガスの成分(揮発性成分)はそれらの結晶には含まれにくいので、残液に集まりしだいに濃度を増す。やがて、その揮発性成分量がマグマに溶け込める量を上回って増加すると、ガスがマグマから分離して泡だつようになる。泡だったマグマが膨張して、マグマ溜りの周囲の岩石の強度を上回ると、割れ目が生じてマグマは上昇を始める。いったん上昇し始めると、マグマは加速されたように発泡し、さらに膨張し破裂して爆発に至る。これは、マグマに溶け込める揮発性成分量が圧力減少とともに小さくなるためである。マグマ溜りからの上昇は、溜まりに下から別の高温のマグマが注入することや、それによる加熱や対流によってマグマの発泡が促されてマグマの体積が増加してもおこると考えられている。
 噴火の際の地表の出口を火口(噴火口)といい、マグマ溜りから火口までの地下の通路を火道という。火口内のより小さな穴を、火孔とよぶことがある。火口内や火口周辺には、水蒸気や火山ガスを噴出している場所がよくあるが、ガスだけでマグマや固形物を出さない場合は噴気とよび、噴火とはいわない。火山の噴煙は、火山ガスだけの場合(おもに白色)と、火山灰などの砕屑物が混じっている場合(灰色、黒色などの有色)がある。[諏訪 彰・中田節也]
水蒸気爆発
普通の噴火と違い、地下のマグマからの水蒸気や、地下水が熱せられて生じた水蒸気が、しだいに蓄積されて圧力を増し、ついに周囲の岩石を壊し破裂する現象で、マグマ噴火とは区別されている。マグマから直接由来したものは出さず、既存の岩石の破片からなる火山砕屑物を噴出する。水蒸気爆発とマグマ噴火(爆発)の中間をマグマ水蒸気爆発ということがあるが、もともとのマグマ水蒸気爆発の意味は浅海や湖でおきたマグマ噴火のことで、大きな破壊力をもつ。水蒸気爆発やマグマ水蒸気爆発は本格的なマグマ噴火の先行現象として、しばしばみられる。水蒸気爆発だけで噴火が始終することもあるが、噴出物中にマグマに由来する物質が混入し始めれば、マグマ噴火に移行する可能性が高くなる。水蒸気爆発の例としては、山体が噴き飛んだ磐梯山の1888年(明治21)の噴火、マグマ水蒸気爆発の例としては、アイスランドのスルツエイ火山の1963~1967年の噴火がある。[諏訪 彰・中田節也]

火山の活動性・寿命

 火山では、噴出物の堆積(たいせき)による成長と、山体崩壊、風化、侵食による破壊とが繰り返しおこっている。普通の噴火が盛んに反復されている間は、山体は成長を続ける。しかし、山体が崩れずに大きく成長すると、不安定になり、山体崩壊をおこすことがつねである。また、噴火の休止期間が長ければ長いほど、侵食によって開析されていく。1回の噴火は爆発的なものに始まり、溶岩を出して終えるサイクルをとることが多い。この噴火のサイクルを通常は何回も繰り返して火山は成長する。火山の寿命は噴火のサイクルが1回だけで、数年以下の短いものから、複数サイクルの数十万年も続くものまでさまざまである。ハワイのようなホットスポットの火山では寿命は数百万年に及ぶ長寿命のものまである。[諏訪 彰・中田節也]
活・休・死火山
現在は、休火山、死火山のことばは用いない。従来は、鹿児島県の桜島のようにしばしば噴火を繰り返す火山を活火山、富士山のように噴火の記録はあるが現在は活動をしていない火山を休火山、北海道の羊蹄山(ようていざん)のように噴火記録がない火山を死火山と、3種に分けたことがあった。しかし、噴火記録の有無について火山によって異なることや、噴火の休止期間は人間にとっては長いものであっても、火山の長い寿命から考えるときわめて短いものである。また休火山ということばは、噴火のおそれがない火山のように受け取られる危険性もある。これらのことから、休火山、死火山のことばは用いられなくなった。たとえば、1979年(昭和54)の長野・岐阜県境の木曽御嶽山(きそおんたけさん)の噴火などが、いわゆる死火山が突然噴火をおこした代表的な例である。
 学界では、2002年(平成14)までは活火山を2000年前までの噴火記録のある火山か噴気活動のある火山としていた。しかし、2000年前までの記録としても御嶽山の例はこの基準からはずれるために見直しを迫られていた。たとえば、インドネシアでは活火山を最近400年間に噴火したことのある火山としている。これは400年以上前にさかのぼると記述した噴火記録がなくなるためである。日本では、国際的な活動的火山の見方を考慮し、2003年1月から、活火山を過去1万年間に噴火したことのある火山と噴気活動のある火山とすることにした。これによって、日本では、北方領土も含んで、それまで86であった活火山が108となり、2011年には110となった。1万年間の噴火履歴は火山ごとの細かい地質調査と年代測定の結果に基づくものであり、今後、調査が進むにしたがってさらに活火山の数は増える可能性がある。
 世界的には、過去1万年間に噴火した経歴のある陸上の火山は1500を超える。インドネシアや南アメリカ大陸など、調査がまだ十分に進んでいないために、この数も将来的にはさらに増える可能性がある。一方、海洋プレートがつくられる中央海嶺では、小さな海底活火山が多数あり、地球上全体の火山の数を表現することは困難である。[諏訪 彰・中田節也]

火山噴出物

 火山ガス、溶岩、火山砕屑物に大別される。噴火では、火山ガスとともに溶岩、火山砕屑物のいずれかまたは両者が地表へ噴出される。火山ガスは平生でも火口や噴気孔、温泉湧出(ゆうしゅつ)孔などから徐々に放出されていることが多く、中毒事故も少なくない。[諏訪 彰・中田節也]
火山ガス
地下のマグマに含まれた揮発性成分、つまりガスの圧力は噴火の原動力であり、ときには火山灰を成層圏まで吹き上げ、山体を吹き飛ばす。火山ガスは大部分が水蒸気で、90~99%を占めることが多い。そのほか、高温の場合はフッ素化合物、塩化水素、亜硫酸ガス、二酸化炭素、水素、窒素などや各種の微量成分を含む。低温の噴気孔ガスや温泉ガスでは、水蒸気のほかは、硫化水素、二酸化炭素、窒素などが主成分で、フッ素化合物や塩化水素、亜硫酸ガスはごく少ない。
 火山ガスの組成は、各火山、各火口、各噴気孔ごとに特徴がある。刺激臭の亜硫酸ガスや腐卵臭の硫化水素に富むものを硫気孔とよび、活動的な火山に多い。二酸化炭素に富むものを炭酸孔とよび、活動が低下した火山に多く、活動的な火山では麓(ふもと)にあることがある。これらの噴気孔に近づくのは危険であり、群馬県の草津白根山では1971年(昭和46)に6人、1976年には3人が前者のガスで中毒死した。後者は低温で無色・無臭なので油断されやすく、犬地獄、鳥地獄などとよばれる。同じ火口や噴気孔でも、火山ガスの温度、量、組成は時とともに変化し、噴火予知の手掛りとなる。2000年(平成12)におきた三宅島(みやけじま)の噴火では、8月の山頂噴火の後、数年にわたって大量の二酸化硫黄(いおう)が放出され続けたため、2005年2月まで全島避難が続いた。
 噴気孔には、おもに火山ガスから直接に凝固析出した昇華物がよく生じており、溶岩流や火山砕屑物にも昇華物が付着していることがある。これらの火山昇華物には、本来の昇華物のほかに、火山ガス中の凝縮水に溶けて運ばれたもの、火山ガスが噴気孔の出口付近で化学変化をおこしたり、周囲の岩石と反応したりして生じたものや、それらの鉱物の溶脱や移動による変朽残留物が混在するものもある。火山昇華物には、黄~橙(だいだい)色の硫黄、無・白・灰色のたんぱく石、白色の明礬(みょうばん)、無・白色のホウ酸と石膏(せっこう)、無色および淡青色の硬石膏、無色および白色の塩化アンモニウム、橙~黄色の雄黄(ゆうおう)、朱~橙色の鶏冠(けいかん)石、無・灰青・黄色のあられ石、鉄黒色の磁鉄鉱、鉄黒~暗赤色の赤鉄鉱、真鍮(しんちゅう)黄色の黄鉄鉱、白~真鍮黄色の白鉄鉱などがあり、有用鉱物が多い。[諏訪 彰・中田節也]
溶岩
地表やその近くで、揮発性成分の大部分を放出したあとのマグマが溶岩で、冷え固まっても溶岩とよぶ。固結した溶岩は、化学組成によって、玄武岩、安山岩、デイサイト、流紋岩に大別される。この順に二酸化ケイ素(SiO2)が増加する。マントルで形成されるマグマは玄武岩質であり、温度低下により、結晶が晶出して、結晶が沈降などによりマグマから取り去られることによって、マグマの二酸化ケイ素の量が増えていき、安山岩やデイサイトになる。これをマグマの結晶分化作用とよぶ。またマグマは、周囲の岩石を溶かし込んで同化することや、異種のマグマと混合することによっても化学組成が変わる。
 噴出時の溶岩の温度は、二酸化ケイ素に富むものほど概して低く、流紋岩、デイサイト質900~1000℃、安山岩質1000~1100℃、玄武岩質1100~1200℃程度である。こうした成分や温度の相違から、その流動性は二酸化ケイ素が少なく鉄やマグネシウムに富むものほど概して大きい。溶けた状態の溶岩の比重は2.3~2.7程度で、二酸化ケイ素に富み鉄とマグネシウムに乏しいものほど小さい。なお、多くの溶岩は、気泡を含んでいるので、見かけの比重はもっと小さい。
 溶岩の流れるさまを溶岩流といい、固結後も、やはり溶岩流とよぶ。溶岩流は、マグマの化学組成や噴出時の諸条件により、さまざまな様相を呈する。玄武岩の溶岩は流動しやすく、水飴(みずあめ)状に流れたものの表面は概して滑らかであるが、光沢のある房状になったり、よじれて縄をなったような縞(しま)模様ができる。これはハワイや伊豆大島などの玄武岩質溶岩流に多く、パホイホイ溶岩(ハワイ)や縄状溶岩とよぶ。表面がコークス状にがさがさしたものは、ハワイではアア溶岩とよばれ、伊豆大島、三宅島や、安山岩質の岩手山(焼走り熔岩流(やけはしりようがんりゅう))などでもみられる。アア溶岩はパホイホイ溶岩とは同じ化学組成であっても、流れるときの温度や斜面の傾斜の違いで生じる。1枚の玄武岩質溶岩流の厚さは数十センチメートル~数メートルが普通である。安山岩の溶岩流は粘り強いので、表層が固結したあとで、内部の流動によって表層が破壊され、角張った岩塊からなる塊状溶岩になりやすい。1783年(天明3)群馬・長野両県境の浅間山大噴火の鬼押出(おにおしだ)し溶岩流、1914年(大正3)桜島大噴火の大正溶岩流などが典型である。この種の溶岩流1枚の厚さは数十メートルが普通である。さらに粘り強い流紋岩やデイサイトの溶岩は、火口近くにうず高くたまってドーム状や塔状に盛り上がり、溶岩流とはならないことが多い。ただし、流紋岩溶岩で高温のものは、粘性が小さいために溶岩流として流れることもある。
 溶岩流や岩脈などには、冷却固結時の収縮のためにできた規則正しい割れ目「節理」が発達していることが多く、長野県諏訪(すわ)の安山岩「鉄平石」の板状節理、兵庫県玄武洞の柱状節理などが好例である。なお岩脈は、火道を満たした溶岩が固まった板状の岩石である。溶岩流の表面や底面の冷却固結後に、内部の溶融状態の部分だけが流れる構造を溶岩チューブといい、ハワイでは火口から海岸まで溶岩が冷えずに流れる効率的な輸送メカニズムである。固結後に空洞となって溶岩トンネルをつくることが多い。玄武岩質の大溶岩流によくみられ、富士山麓(ろく)の風穴(ふうけつ)・氷穴(ひょうけつ)が好例である。また溶岩樹型は、樹木が溶岩流で包囲されて炭や灰になり、あとで自然にまたは人工的に炭や灰が除去され、樹木(おもに幹)の形を残している空洞のことをいい、富士山に好例がある。[諏訪 彰・中田節也]
火山砕屑物
噴火の際にマグマ(溶岩)や古い岩石が破砕され生じた大小の破片を火山砕屑物(火砕物)といい、それらが堆積(たいせき)したものを火山砕屑岩とよぶ。
 火山砕屑物は大きさや形などで分類され、普通は径2ミリメートル以下を火山灰、径2~64ミリメートルを火山礫(れき)、径64ミリメートル以上を火山岩塊とよぶ。火口から放出された火山礫や岩塊のことを噴石という。そのうち、流動性を示す構造をもつものを火山弾(だん)という。粘性の小さい玄武岩質の溶岩では紡錘状、球状、リボン状、皿状などとなり、かなり粘り強い安山岩質溶岩では表面に亀裂(きれつ)の入ったパン皮状の火山弾ができやすい。水飴のような溶岩が引きちぎられ、毛髪のように細長くなったものを火山毛といい、ハワイでは火山の女神の名にちなみ「ペレーの毛」とよぶが、東京の伊豆大島などでもときには噴出される。また、雨滴状のものを「ペレーの涙」とよぶ。一方、噴石や火山礫にはごく多孔質のものがある。これは、マグマが噴出時にガスによって激しく泡立つためであるが、白~灰色のもの(二酸化ケイ素SiO2に富む)を軽石(浮石(ふせき))、黒~暗褐色のもの(SiO2に乏しい)をスコリア(岩滓(がんさい))とよぶ。火山砕屑物には、噴煙柱として上空に噴き上げられ降り積もるもの(降下火砕物)と斜面を流れ下って堆積するもの(火砕流)とがある。また、山体崩壊や泥流・土石流によって二次的に運ばれるものも火山砕屑物である。
 火山砕屑物が固まったものは火山砕屑岩(火砕岩)とよばれ、構成物の粒度や性質に応じ、火山角礫岩、凝灰角礫岩、火山礫凝灰岩、凝灰岩などに分類する。九州中部一帯を覆う通称「阿蘇(あそ)溶岩」や、福島県の「白河石」などは、火砕流堆積物が溶結してできた凝灰角礫岩である。[諏訪 彰・中田節也]

噴火の形式と規模


噴火の形式
噴火は泡だったマグマの破砕現象であり、その様相はマグマの性質に関係が深く、その粘性の大小に左右される。一般に、二酸化ケイ素が多く比較的低温の粘り強い溶岩を出す噴火ほど爆発的で、二酸化ケイ素が少なく比較的高温の流れやすい溶岩を出す噴火ほど穏やかである。しかし、ガスがどれだけの圧力で蓄えられているかにも依存し、粘性だけが爆発の度合いを決めているわけではない。また、マグマ自身の破壊ではなく、マグマの熱によって加熱された水蒸気の爆発によっても噴火はおこる(水蒸気爆発)。
 溶岩の性質は同一火山でも噴火ごとに多少は違うが、歴史時代というような限られた期間内の諸噴火で放出された溶岩は概して似た性質をもち、各火山の噴火形式にも特有の癖が認められる。海洋プレートが沈み込む場所にある火山では安山岩溶岩が多く、噴火は爆発型が多い。一般に、火山ごとに活動休止期が長いほど次の噴火は激しかったり、長引いたりする傾向がある。これは長い期間にわたって地下でのマグマの生産(蓄積)量がほぼ一定であることを反映している。おもな噴火の諸形式を説明すると次のとおりである。
〔1〕マグマ噴火(ハワイ、ストロンボリ、ブルカノ、プリニー式噴火)
(1)ハワイ式噴火はハワイのキラウエア、マウナ・ロア火山で代表されるように、粘性の低い玄武岩質溶岩が噴出する爆発的でない噴火である。割れ目などに沿って配列した複数の火口から溶岩噴泉をするのが特徴で、ときには火口に溶岩湖を形成する。溶岩は流動性に富み、秒速15メートルで流れることがある。伊豆大島や三宅島(みやけじま)噴火でも見られた。
(2)ストロンボリ式噴火は、短い間隔で周期的にマグマの破片や火山弾が火口から放出される噴火である。阿蘇山(あそさん)や諏訪瀬島(すわのせじま)でしばしば発生している。夜間の長時間露出で撮った写真では灼熱(しゃくねつ)したシャワーの放物線のように見える。ギリシアの詩人ホメロスの時代から噴火を続けてきたイタリアのリパリ諸島の火山島名にちなんでいる。
(3)ブルカノ式噴火は、ほとんど固結し火道をふさいでいた溶岩が、地下のガス圧が高まって火山岩塊や火山弾が火山灰といっしょに爆発的に放出される噴火である。浅間山や桜島など安山岩からできている日本の火山に多い噴火である。リパリ諸島の火山島名にちなんでいる。
(4)プリニー式噴火は、大量の軽石や火山灰が火口から空高く放出される大規模な噴火である。二酸化ケイ素に富むデイサイトや流紋岩マグマでしばしばおこる。1977年(昭和52)の有珠山(うすざん)噴火がこの例で、火山灰は成層圏まで達した。外国ではフィリピンのピナツボ火山の1991年噴火がこれにあたる。紀元79年のイタリアのベスビオ火山の噴火の際に噴火を体験しそれを詳述した大小プリニウスの名前にちなんでいる。プリニアン噴火ともいう。
〔2〕水蒸気爆発・マグマ水蒸気爆発
(1)水蒸気爆発は水蒸気噴火ともいう。地下水や海水などがマグマの熱で加熱され圧力が高まって爆発する現象をいう。噴出物は古い火山体の岩石の破片のみで構成される。比較的細粒の火山灰が大量に放出されるのが特徴で、水蒸気爆発の際には泥流がおきやすい。水蒸気爆発は大きな噴火の初期や末期におこることが多い。ハワイ式の噴火であっても新たな場所に火口ができる場合には水蒸気爆発をすることが多い。
(2)マグマ水蒸気爆発は、浅海や湖でおきたマグマ噴火のことをもともとさすが、水蒸気爆発とマグマ噴火の中間の噴火をさすこともある。マグマが地下水や海水に接触し、マグマが細かく破砕することによって熱が効果的に水や水蒸気に伝わり、急激な膨張がおこって爆発に至ると考えられている。マグマ水蒸気爆発は激しい破壊力があるのが特徴である。伊豆大島の波浮(はぶ)港や三宅島の海岸付近に数多くあるマール地形(縁(ふち)が低い円形の火口)をつくった。三宅島の2000年(平成12)噴火では山頂のマグマ水蒸気爆発によって、成層圏まで達する火山灰のきのこ雲ができた。
〔3〕火砕流(火山砕屑流) 高温の火山砕屑物が火山ガスとともに山の斜面を高速で流れ下る現象で、流紋岩、デイサイト、安山岩質の粘り強い溶岩を出す噴火でおきやすい。秒速数十メートルもの高速で谷底を流れ、火山灰と火山ガスのみからなる希薄な火砕サージが横に広がるのでたいへん危険である。溶岩円頂丘(溶岩ドーム)や溶岩流が崩れて発生する火砕流を「熱雲」とよぶ。軽石(かるいし)を多く含むものを、軽石流(例、1929年北海道駒ヶ岳)といい、熱雲よりは規模が大きい噴火によって生じる。1902年、西インド諸島のフランス領マルティニーク島プレー火山の噴火では、小規模ながら高速・高温の熱雲が、火口から約8キロメートル離れた港町サン・ピエールの住民約2万8000人をほぼ全滅させ、20世紀最大の噴火災害を出した。多くが火砕サージで犠牲になった。
〔4〕火山泥流 多量の水分を含んだ火山灰などが、ときには秒速数十メートルにも達する高速で山麓へ流れ下る現象で、たいへん危険である。土石流の一種である。死者144人を出した1926年(大正15)の北海道の十勝岳大泥流が好例である。玄武岩質火山では発生しにくいと考えられていたが、三宅島の2000年(平成12)噴火では水蒸気~マグマ水蒸気爆発によって多量の細粒火山灰が堆積(たいせき)し、泥流が繰り返し発生した。噴火中に、火口から直接、熱泥流が流れ下ることもある。2000年の有珠山噴火では、火口にたまっていた熱泥水が流れ出して熱泥流となった。1783年(天明3)の浅間山大噴火のように、岩屑(がんせつ)なだれが利根川(とねがわ)の上流に突入して泥流に変わったこともある。
〔5〕岩屑なだれ 火山体の一部が不安定になって崩壊(山体崩壊)し、その結果発生する岩なだれ現象。山体崩壊は地下へ大量にマグマが貫入することや、大きな地震によって引き起こされる。成層火山が大きく成長する過程で必然的におこると考えられる。1888年(明治21)の磐梯山(ばんだいさん)の噴火や、1980年のアメリカ合衆国のセント・ヘレンズ火山の噴火で発生した。
 なお、火山には、ほとんど山頂部だけで噴火するものもあれば、山腹で噴火するものもある。富士山は寄生火山が多く(約70)、有史以後の噴火はほとんど山腹噴火であった。また、多くの噴火はほぼ円形の火口でおこるが、山体の弱線に沿う数珠(じゅず)つなぎの火口、ないしは一連の割れ目から噴火する癖のある火山もある。岐阜・長野両県境の焼岳(やけだけ)では、よく不規則な方向の割れ目で噴火するが、三宅島では、山頂を中心とするほぼ放射状の割れ目からしばしば噴火する。アイスランドやハワイでは大規模な割れ目噴火が多く、玄武岩質の溶岩噴泉が連なった「火のカーテン」が20キロメートル以上も続くことがある。なお、前に述べたように、噴火を、特徴的な噴火形式を示す火山やその所在地の名称をつけて(例、ブルカノ式、ハワイ式)分類する方法が普及しているが、当該火山自身がその形式でない噴火をすることもあるので、注意を要する。[諏訪 彰・中田節也]
噴火の規模
火山噴火の規模は噴出量で定義されている。噴火のエネルギーは、噴出物が火口から放出されたり、爆発地震を引き起こす運動エネルギーと熱エネルギーからなる。このうち熱エネルギーが運動エネルギーよりはるかに大きく、火口から放出されたマグマ量に依存する。そのため噴火の規模は噴出物量として示される。また、熱エネルギーであるため、噴出量は火山灰や火山ガスが上昇して形成される噴煙柱の高度とも相関がある。
(1)火山爆発指数(VEI) VEIはVolcanic Explosivity Indexの略。1回の爆発的な噴火によって放出された噴出物量(立方メートル)の常用対数から4を減じた数字が火山爆発指数となる。たとえば、1991年に起きたフィリピンのピナツボ火山噴火の噴出量は10立方キロメートル(1010立方メートル)を上回り、火山爆発指数が6になる。第四紀の火山噴火の規模は、爆発指数で0から8まで定義することができ、0が非爆発的な噴火、1が小規模噴火、2が中規模噴火、3がやや大規模噴火、4が大規模噴火、5と6が巨大噴火(非常に大規模な噴火)、7と8が超巨大噴火とされる。噴煙高度は、指数0のときが100メートル以下、1が1000メートル以下、2が1~5キロメートル、3が3~15キロメートル、4が10~25キロメートルで、5以上は25キロメートル以上となる。
(2)噴火のマグニチュード(M) 噴出物量を重量(キログラム)で表し,その常用対数から7を減じた数字を噴火のマグニチュードとする。これは爆発の度合いや噴煙の高さを考慮しないが、噴出様式の違いによる噴出物の比重を考慮しなくてよいという利点がある。爆発的噴火の場合はほぼ火山爆発指数と同じになる。
 噴火の規模が大きいほど発生頻度が小さく、小規模噴火は世界のどこかで毎日起きているのに対して、非常に大規模な噴火は数十年に一度しかおこらない。
 なお、地震のマグニチュードと比べると火山噴火のマグニチュードのエネルギーの方がはるかに大きい。たとえば、火山爆発指数が5の桜島火山の1914年(大正3)噴火のエネルギーは4×1018ジュールであり、マグニチュード9.0の地震のエネルギー2×1018ジュールよりも大きい。[中田節也]

火山の形態

 火山は形も多様であるが、溶岩の種類や噴火の形式と深い関係がある。
(1)爆裂火口 爆発によって漏斗状にできた円形の火口のこと。周囲に堆積(たいせき)物がほとんどないものをマールといい、底が平坦(へいたん)で水を蓄えている場合が多い。秋田県一ノ目潟、伊豆大島波浮(はぶ)港、鹿児島県山川港が好例である。ドイツ南西部のアイフェル地方には爆裂火口が125も群集している。
(2)噴石丘 噴石丘は火山砕屑物だけで構成された円錐(えんすい)形の小丘。火砕丘ともいう。伊豆半島の大室山(おおむろやま)がその例。高さのわりに火口が大きい噴石丘をタフリングといい、海辺に生じたマグマ水蒸気爆発によってできる。ハワイのダイヤモンド・ヘッド火山が典型である。
(3)成層火山と円錐火山 成層火山は、溶岩流と火山砕屑物が積み重なってできた火山で、安山岩や玄武岩の火山に多い。そのごく単純な形のものが円錐火山で、山頂近くほど急傾斜し、その角度は40度に達することもある。日本には円錐火山が多く、「○○富士」とよばれる山が各地にあるが、実際の富士山は寄生火山や寄生火口が日本一多く、構造は単純ではない。
(4)楯状(たてじょう)火山 玄武岩などの流動性に富む溶岩が薄く広く流出し、西洋の楯を伏せたようにごく緩傾斜の火山。ハワイのマウナ・ロア火山が典型である。
(5)溶岩台地 流動性に富む玄武岩質の溶岩が大量に流出してできた広大な台地。中生代白亜紀に生じたインドのデカン高原(面積50万平方キロメートル、厚さ2キロメートル)をはじめ、種々の地質時代にできた溶岩台地は、地球表面の約200万平方キロメートルを占めるが、生成が目撃されたのは、1783年アイスランドのラーキ火山の割れ目噴火のときだけである。その噴火では、長さ約25キロメートルの割れ目から12立方キロメートル余の溶岩と約3立方キロメートルの砕屑物を出し、溶岩は565平方キロメートルの面積を覆った。香川県屋島は、第三紀のごく小規模な溶岩台地の残骸(ざんがい)である。
(6)溶岩円頂丘と溶岩塔 流紋岩、デイサイトや安山岩のごく粘り強い溶岩が地表に押し出してできた火山。前者は溶岩ドーム、後者は溶岩岩尖(がんせん)や溶岩尖塔ともよばれる。有珠(うす)の昭和新山や大有珠のように、成層火山の山腹や頂部に生ずることが多い。神津(こうづ)島や宮城県鳴子火山など、溶岩円頂丘だけが群集している所もある。
(7)カルデラ 火山地域に分布する直径1.5キロメートル以上の火口状の窪地。1888年(明治21)の磐梯山(ばんだいさん)大爆発のように、山体崩壊で山体が破壊されたり、群馬県の赤城山(あかぎさん)のように、火口が壁の侵食・崩壊で拡大されたりしてできた馬蹄(ばてい)形(U字形)の崩壊カルデラや侵食カルデラもあるが、世界の美しい形をしたカルデラは、火砕流などで多量のマグマが一挙に噴出した直後、火口付近の土地が陥没して生じた陥没カルデラである。阿蘇(あそ)カルデラ(径20キロメートル前後)をはじめ、九州や北海道には巨大な陥没カルデラが多い。また、規模の大きな火口もカルデラ地形を示すことがある。北海道森町の濁川(にごりがわ)カルデラがその例で、ボーリング調査により、その内部構造が調べられた。このようなものは、じょうご型カルデラや爆発カルデラとよばれている。カルデラは、スペイン語で鍋(なべ)の意で、カナリア諸島の火山島の窪地に名づけられたのがおこりである。
(8)複合火山と複成火山 複合火山は複数の火山体が組み合わされてできたもので、火山の多くはこれである。休止期をはさんで噴火活動を繰り返した結果できた火山は複成火山とよばれる。これに対し、ただ1回の噴火活動で生じた火山を単成火山という。マール、単一の火山砕屑丘、溶岩円頂丘がその例とされる。[諏訪 彰・中田節也]

火山の分布と火山帯


世界の火山帯
火山が列や群をなし一定の帯状の広がりをもって分布している場合に火山帯という。古くても、地質時代のある限られた時期に活動した火山列や群についても火山帯ということばを用いる。一般に、火山の分布は、海洋プレートが生産される中央海嶺(かいれい)、海洋プレートが沈み込む島弧(弧状列島)や大陸弧、および、海洋あるいは大陸プレート内部に点在するホットスポットに限られる。このため、海底では中央海嶺が地球を一周するほどの長さの長大な火山帯がある。また、環太平洋火山帯とされるものは、南アメリカ、中部アメリカ、北アメリカ、アリューシャン、カムチャツカ、日本、フィリピン、ソロモン、バヌアツ、ケルマデック、ニュージーランドまで広がり、太平洋を取り囲むように火山が存在するので火の輪(リング・オブ・ファイアー)とよばれる。また、イタリア、ギリシア、トルコを経てミャンマー、インドネシアまで延びる地中海火山帯が教科書に載った時代もある。これらは単に地理的な分布だけを考慮して提案されたものであって、マグマの生成にプレートテクトニクスが関係していることが理解されていなかった時代のことである。
 プレートテクトニクスの理解によって、陸上の火山が海溝の背後で弓形をした列島や大陸縁辺でおこっていることがうまく説明されるようになった。このような火山活動が盛んな島弧や陸弧では、プレートが沈み込んでいるため地震活動も活発である。火山の分布は海溝側でもっとも密でそれより海溝側に存在しないので、気象の前線にならって「火山フロント(火山前線)」とよばれる。そこから内側(海溝の反対側)に向かって火山の数も噴出量も減少する。また、火山噴出物の化学組成も変化しアルカリ元素の量が増加する。火山フロントの下の深発地震面の深さは100~200キロメートルとほぼ一定である。これは沈み込むプレート内部で水を含んだ鉱物が不安定になり、上のマントルに水を供給する深さであると考えられている。そこではマグマはマントル物質に水が加わることによって溶けて発生しているため、中央海嶺の火山やホットスポット火山のマグマに比べて水を主とする揮発性成分に富んでいるのが特徴であり、爆発的な噴火が島弧や陸弧の火山で多いもともとの原因ともなっている。
 南アメリカではナスカプレートの沈み込みによって火山活動がおこり、南・中・北部アンデス火山帯ができている。中央アメリカやメキシコの火山帯、カスケード火山帯は太平洋プレートが東側に沈み込むことによってできた。一方、太平洋プレートが反対の西側に沈み込むことによって、アリューシャン、カムチャツカの火山帯、東日本・マリアナ火山帯、トンガ・ケルマデックの火山帯が形成された。フィリピン海プレートの沈み込みによっては西日本火山帯やフィリピンの火山帯ができた。一方、イタリア、ギリシアからトルコまでの地中海の火山帯はアフリカプレートがユーラシアプレートに沈み込み、あるいはアラビアプレートがユーラシアプレートに衝突することによって形成された。インドネシアやバヌアツのニュー・ヘブリデス火山帯はインド・オーストラリアプレートが南や西から沈み込むことによってできたものである。カリブ海の小アンティル火山帯や南極半島からサウス・サンドイッチ火山帯は大西洋プレートが沈み込むことによってできた。このようにプレートの複雑な動きを反映して島弧や大陸弧の火山帯が生まれている。
 ホットスポット火山はハワイのように列をなしていることがある。アリューシャン海溝から海底火山がハワイまで約6000キロメートルも列をなして続いている。ハワイ天皇海山列とよばれる。これは、不動の場所にあったマントルプリューム(ホットスポットで湧き上がる巨大な逆雫状の塊)の上を太平洋プレートが約7000万年かけて移動し続け、海底で定期的に火山活動がおこったためであるとされている。この火山列は、約4300年前に太平洋プレートが移動の向きを変えたために、「く」の字型に折れ曲がっている。このほかアフリカの北部では大陸プレートが引き裂かれることによって東アフリカ地溝帯があり、多くの火山が分布している。そこでは炭酸塩からなる溶岩、カーボナタイトも噴出している。[諏訪 彰・中田節也]
日本の火山帯
日本列島の第四紀火山は、北海道を東西に横断し、JR東北本線の西側を南下し、中部地方の北部から伊豆諸島~火山列島(硫黄(いおう)列島)を経てマリアナ諸島に至る東日本火山帯と、山陰地方から九州を経て琉球(りゅうきゅう)列島(南西諸島)に至る西日本火山帯に2大別され、活火山は前者のほうが多い。両火山帯とも、海溝あるいはトラフ側ほど火山が密に分布し、大陸側ほど火山が少ない。しかも、太平洋側の分布の限界線は明らかであるが、大陸側ははっきりしないので、太平洋側限界線は「火山フロント(前線)」とよばれ、それから大陸側へ離れるほど、火山噴出物の量は概して減少し、化学組成も変化する。このフロント(前線)は、千島海溝、日本海溝、伊豆・小笠原(おがさわら)海溝、および南海トラフ、琉球海溝とほぼ平行に走る。これらの海溝と火山フロントの間では、地殻熱流量が低く、震源の深さが数十キロメートルの地震がよくおこるが、火山帯フロント付近では地殻熱流量が高くなり、震源の深さも百数十キロメートルになる。東日本火山帯のフロント沿いでは、アルカリに乏しい玄武岩や安山岩やデイサイトの火山が多く、さらに大陸側へ進むと、震源はより深くなり、火山はまばらになり、噴出物はしだいにアルカリに富み、含水鉱物である角閃石(かくせんせき)を含む安山岩を伴って、アルカリに富む玄武岩が出現する。西日本火山帯のフロント沿いにも火山が多く、噴出物はおもに安山岩であるが、東日本よりも、概してアルカリが多く、とくに酸化カリウムK2Oに富み、さらに大陸寄りでは、典型的なアルカリ玄武岩からなる火山が散在する。
 東日本火山帯と西日本火山帯は、それぞれ、太平洋プレートとフィリピン海プレートが日本列島の下に沈み込むためにできたものである。火山フロントは地下でマグマが発生する海溝側の限界を示している。その場所は、斜めに沈み込むプレートの中で含水鉱物が不安定になる深度によって決まっているとされる。
 明治時代から、日本の第四紀の諸火山は、地理的分布により、便宜上数個の火山帯に細分された。千島、那須(なす)、鳥海(ちょうかい)、富士、乗鞍(のりくら)(御嶽)、白山(はくさん)(大山(だいせん))、霧島(きりしま)(琉球)の7火山帯は現在でも地理的分布の意味で用いられることがあるが、プレートテクトニクスやマグマ発生の仕組みといった火山学的意味とは関係ないものといえる。とくに、これらの火山帯は相互の境界も、他の地学的現象との関係も不明瞭(ふめいりょう)である。[諏訪 彰・中田節也]
海底火山と火山島
海底噴火の噴出物の堆積(たいせき)によって火山島が生まれることがある。しかし、その多くは波浪の侵食などで姿を没した。1952年(昭和27)に伊豆諸島海域に生じた明神礁(みょうじんしょう)のように、マグマ水蒸気爆発で破壊され消滅することもある。1934年(昭和9)誕生の鹿児島県硫黄島(いおうじま)新島(標高24メートル)のように、いまも島として残存しているのは珍しい。1973年に小笠原の西之島(面積約7万7000平方メートル、標高25メートル)付近に生じた新島は、本島の約3倍の面積と約2倍の標高になり、翌年、噴火停止後に本島に接続した。
 水深数百メートルまでの浅海底での噴火は、軽石の浮上、海水の汚濁、変色、昇温、海面上への噴煙、噴石などによって認められる。太平洋に多い海山や大西洋に多い深海海丘も海底火山と考えられるが、深海では水圧が大きく(水深1000メートル以上だと水圧100気圧以上)、噴火はおもに穏やかな溶岩流出型で、人々には認められにくい。地球表面の約3分の2を占める海洋域の火山についての知識は、1968年から始まった国際的な深海掘削計画以降、急速に研究が進みつつある。海底を構成する岩石はソレアイトとよばれる玄武岩で、島弧や大陸縁辺に分布する玄武岩に比べて酸化カリウムK2Oに乏しいのが特徴である。総延長約8万キロメートルもの中央海嶺では火山活動が活発に起こり、そこで生産されたマグマが海洋プレートとなり、古くなった海洋プレートは横方向に移動する。そのため、海洋プレートの年代は中央海嶺からは離れるほど古くなる。ハワイのような海洋プレートの内部に分布するホットスポット火山では、最初期にアルカリ岩が少量噴出し、その後、前期にソレアイトの巨大な山体が成長し、末期に酸化ナトリウムNa2Oに富むアルカリ岩系の噴出物が少量噴出している。ホットスポットでは、プレートの移動に伴って新たな場所に火山が形成され、海底海山列ができることがある。[諏訪 彰・中田節也]

火山の利用と防災


火山の恩恵と災害
日本は活火山を含む第四紀火山に富み、さらに、より長い地質時代にわたる火山岩ないし火成岩や、凝灰岩などの火山性堆積(たいせき)物は国土の大半を覆い、火山は国民生活ととくに深い関係がある。火山は山紫水明の風光や豊富な温泉を生み出し、活火山の多くが国立・国定公園に指定されている。火山活動によって産出された岩石は石材として利用されたり、各種の金属鉱床の多くは広義の火山活動のたまものである。温泉は、おもに地下水がマグマやそれから分離した水蒸気などで温められ、また、それらの物質を溶かし込んで地表へ出てきたもので、活火山よりも、活動を終えた火山や、侵食の進んだ火山地域に多く、第三紀の火成岩地帯にも多い。近年、温泉、噴気の熱エネルギーの多角的利用が進展し、火山深部の熱エネルギーを利用した地熱(ちねつ)発電も行われている。2012年(平成24)の時点で、日本では、岩手県松川、大分県八丁原(はっちょうばる)、岩手県葛根田(かっこんだ)などの17か所(設備容量計約52万キロワット)が稼動。また世界では、アメリカ、フィリピン、イタリア、メキシコなど20か国以上で地熱発電が行われており、その総計は約800万キロワット以上に達している。
 火山災害には、火山地域であるための土木工事や農耕の困難、強酸性のいわゆる毒水の害、硫気変質地帯の山崩れなどもあるが、噴火の害がとくに著しい。溶岩流、火山砕屑物、火山ガス、爆風をはじめ、噴火の前後などにおこる火山性震動、山崩れ、地割れ、海底噴火などに伴う津波などで災害を生ずるが、火砕流、火山泥流はとくに危険である。日本での最大の噴火災害は、雲仙岳の1792年(寛政4)噴火の後に地震が引き金でおきた眉山(まゆやま)の崩壊と、それに引き続く津波による死者約1万5000人。世界史上最大の1815年のタンボラ火山(インドネシア)噴火では、約9万2000人がおもに飢えによって死亡した。1783年(天明3)の浅間山大噴火など、成層圏にまで噴き上げられた火山灰雲(実は、亜硫酸ガスなどの火山ガスが大気中の水蒸気と反応して生じた、エーロゾルとよばれる硫酸性の極微粒子を主とする煙霧)が地球を取り巻き、日光を遮り、数年間、世界全般に冷害を発生ないし助長させたとされる例も少なくない。
 近年、火山地域の観光開発が進み、噴火の際は死傷者を出すおそれのある区域にも、登山観光客や定住者が激増した。それで、小爆発でも大災害を生じやすい。活火山の観光開発などは、防災策を含めた合理的なものでなければならない。噴火災害を防ぐには、火山活動を絶えず監視し、その動静を的確にとらえるための火山観測体制を確立するとともに、種々の防災工事や警報組織を整備し、火山知識を広く普及することが肝要である。[諏訪 彰・中田節也]
噴火の予知と前兆・随伴現象
噴火災害の防止軽減には、いつ・どこで・どんな大きさの噴火がおこるかを予測・予報することが肝要である。さらに、噴火開始後に、その後の活動推移を見通したり、噴火停止後に、再発の有無を予測・予報することも重要であり、社会的には、最初の噴火発生の予報より重要な場合が多い。このため、火山の動きを総合的に監視し、噴火現象はもとより、その前兆・随伴現象を的確にとらえねばならない。また、噴火やその前兆・随伴現象は火山ごとに個性があり、噴火地点や噴火形式などの予測には、各火山の岩石や地質構造、過去の噴火や災害の履歴などの究明が有効である。つまり、野外で過去の諸噴火の年代や、火口の位置、噴出物の種類や分布を調べたり、古文書の噴火記録を考証したりして、各火山の「カルテ」や火山災害がおよぶ範囲を示した「ハザードマップ」を作成しておくべきである。さらに、噴火が開始されたら、噴火現象の観測だけでなく、新火山噴出物の量や化学的・岩石学的性質などの究明も急ぐとともに、ハザードマップなどに基づく避難計画を立てるべきである。
 一般の人でも気づきやすい噴火の前兆現象は次のとおり。
(1)有感地震の群発。
(2)地鳴り、鳴動。
(3)顕著な地形変化 山崩れ、地割れ、土地の昇降、火口内の地形、とくに深さの変動。
(4)噴気・噴煙・地温の顕著な変化 火孔・噴気孔・地熱地域の新生・拡大・移動、噴気や噴煙の量・色・臭気・温度や昇華物などの異常変化、地温の上昇、草木の立ち枯れ、動物の変死。
(5)湧泉(ゆうせん)の顕著な変化 温泉・冷泉の新生・枯渇、量・味・臭気・色・濁度・温度の異常変化、動植物の異変。
(6)付近の海洋・湖沼・河川の水の顕著な変化 水の量・臭気・色・濁度・温度の変化、発泡、軽石・死魚の浮上。
(7)火映 夜間、火口内の赤熱溶岩や火炎に映え、上空の雲や噴気噴煙が明るく赤く染まって見える現象(火映は噴火の赤熱溶岩流などによる場合もある)。
 しかし、噴火を的確に予知するには、諸種の精密観測を総合的、連続的に行わねばならない。その代表的なものは、火山性震動(地震、微動)、地殻変動(土地の昇降、傾斜、伸縮など)や、地磁気、電気抵抗、重力、地温、噴気(火山ガス)、湧泉などである。諸現象の有線・無線によるテレメータリング(遠隔測定)、さらに熱的状態などのリモート・センシング(遠隔探査)、それらの観測への航空機や人工衛星の利用、データ処理の能率化なども急速に進んでいる。とくに最近では、GPS(全地球測位システム)や合成開口レーダー(SAR)を使った観測が、噴火に伴う地殻変動をとらえるうえで大きな威力を発揮している。
 火山性地震はマグマの動きによって引き起こされ、噴火予知のもっとも有力な手掛りで、1944~1945年(昭和19~20)に有珠山麓(うすさんろく)に誕生したデイサイト質の昭和新山のように、粘り強い溶岩を出す噴火ほど、顕著な地震がおきやすい。A型地震、B型地震、爆発地震に3大別される。A型は、火山の地下3~10キロメートル程度の深さで発生し、地震計による地震動の記録では、一般の地震と同様にP相、S相が明瞭(めいりょう)である。B型は、活動火口縁の周囲約3キロメートル以内のごく浅所に密集して発生し、A型に比べて、マグニチュード(M)はごく小さく、P相もS相も不明瞭である。この型の地震は、安山岩質の浅間山や桜島などでよくおき、その発生頻度は噴火ととくに密接な関係があり、噴火予知上とりわけ重要である。爆発地震は、爆発そのものの衝撃で発生し、爆発の規模を知る主要な手掛りとなる。また、伊豆大島やハワイなど、溶岩が流動性に富み、絶え間なく小爆発を反復したり、溶岩噴泉を形成したりする噴火では、それに伴い、連続した脈動型の震動がおこることが多く、ときには噴火前にも地下のごく浅所に同様な震動がおきることもあり、火山性微動(火山性脈動)とよばれる。さらに玄武岩質の伊豆大島などでは、地磁気の変化の連続観測も、地下のマグマの活動の消長を把握するのにとくに有効である。この種の岩石は磁鉄鉱などの強磁性鉱物に富み、火山全体が強い磁石になっているが、マグマが上昇すると、火山内部の温度の上昇や圧力の増大で、磁気が変動すると考えられる。[諏訪 彰・中田節也]
火山観測と火山情報
火山活動の実態を究明し、その動静を監視するため、世界の主要活火山では常時観測が行われている。世界最古の火山観測所は1841年創設のイタリアのベスビオ火山観測所であるが、現在、総合的にもっともよく整備され、各種の研究成果をあげているのは、1912年にキラウエア火山に創設されたハワイ火山観測所である。日本における火山活動の科学的調査は1876~1877年(明治9~10)の伊豆大島の噴火に始まる。1881年に、全国の自治体で噴火などの異常現象を認めたら、東京気象台(現、気象庁)へ報告することが定められ、国家事業としての火山観測を気象庁が担当する端緒となった。島民125人を全滅させた1902年(明治35)の伊豆鳥島の大爆発などが火山観測~噴火予知研究を勃興(ぼっこう)させる契機となり、1911年にまず浅間山に火山観測所が設けられた。その観測研究は軽井沢特別地域気象観測所と東京大学地震研究所に受け継がれている。
 火山活動監視の社会的必要性の急増、科学技術の長足な進歩にかんがみ、気象庁は1962年(昭和37)から全国火山観測体制を本格的に整備し、常時観測と機動観測(基礎調査と緊急調査)を併用して、効率的に火山活動を監視しており、諸火山の活動、状況を広報するための「火山情報」の発表も1965年から業務化された。また、桜島、霧島、阿蘇(あそ)、雲仙、浅間、伊豆大島、有珠(うす)などの各火山には諸大学の、箱根山には神奈川県の観測・研究施設もある。日本やハワイでは火山情報がかなり適時適切に発表されるので、「寝耳に水」の噴火は激減してきた。さらに日本では、気象庁、諸大学などがより密接に協力し、噴火予知の実現を図っていくための観測・研究計画が1974年に発足し、それに参加している諸調査研究機関や関係行政官庁の連携を円滑化するための「火山噴火予知連絡会」(事務局は気象庁)も創設された。火山の監視や情報の公表などは各火山近隣の地方気象台等で単独に行われていたが、2002年(平成14)これらの情報を総合的に監視、診断し、早く明確に発表、解説するため、気象庁により火山監視・情報センターが東京(気象庁本庁)、札幌・仙台・福岡各管区気象台の4か所に整備された。2007年からは活動的な活火山には噴火警戒レベルが導入され、センターで発表される火山情報には「噴火警報」と「噴火予報」がある。このほかに、火山現象に関する情報として、「火山の状況に関する解説情報」「火山活動解説資料」「週間火山概況」「月間火山概況」「噴火に関する火山観測報」がある。[諏訪 彰・中田節也]

火山の植生

 火山の植生は、非火山の植生とはさまざまな点で異なっている。噴出物の堆積(たいせき)によって、それまで生育していた植生は破壊され、まったく新しい遷移(植物群落の系列)が展開するが、噴出堆積物は一般に保水力が低いために強く乾燥し、貧養で、しかも不安定な立地となるため、植生の発達には厳しい環境となる。火山砂やスコリアなどの傾斜地では、つねに種数の少ない斑紋(はんもん)状の群落(フジアザミ―ヤマホタルブクロ群落、シマタヌキラン群落など)が生育し、硫黄孔(いおうこう)源にはヤマタヌキラン群落などが持続群落として存続する。安定した溶岩地では、植生の定着やその後の遷移も比較的早い。溶岩ではハイイロキゴケなどの蘚苔(せんたい)、地衣の植生に始まり、凹状地などの水分条件に恵まれた場所には、イタドリやヤシャブシ類が先駆的に侵入する。このほか、低地ではクロマツ(伊豆大島、桜島など)、山地ではアカマツ(浅間山の鬼押出しなど)、亜高山ではカラマツ(富士山、北海道駒ヶ岳(こまがたけ)など)の針葉樹林が形成され、やがて、それぞれの植生帯に対応する終局相に向かって遷移する。[奥田重俊]

火山と民俗

 地中から火を噴き、溶岩を流出する火山に対しての畏怖(いふ)の観念は世界中に存在しており、神話・伝説も各地にみられる。
 日本には、火山の神を竜または大蛇であるとする伝説が数多く存在する。阿蘇山(あそさん)の噴火口にあたる神霊池の主が「健磐竜命(たけいわたつのみこと)」と名づけられているほか、871年(貞観13)の鳥海山(ちょうかいさん)の噴火について『三代実録』には「有両大蛇、長十許丈、相流出入於海口、小蛇随者不知其数」とあり、945年(天慶8)の霧島山の噴火を目撃した僧円空は「周囲三丈、其(その)長十余丈許(ばかり)なる大蛇(おろち)、角(つの)は枯木の如(ごと)く生ひ、眼(め)は日月の如く輝き、大に怒れる様にて出来(いできた)り給ふ」と伝えている(長門本『平家物語』)。火山の神が竜または大蛇とされるのは、その溶岩流が蛇身に擬せられたためと考えられ、噴火に際して降る火山毛は「竜の毛」とよばれていた。記紀の記述のなかにも火山現象は登場している。「八岐大蛇(やまたのおろち)」は溶岩流であったともいわれるし、伊弉冉尊(いざなみのみこと)が火神軻遇突智神(かぐつちのかみ)を産み、陰所(ほと)を焼かれて神去(かんさ)ったことも火山の噴火を表しているとする説がある。火山の噴火は、人間が神の不興を買ったために神の祟(たた)りとしておこるという観念も広く存在し、神への陳謝として、官社に列して祭祀(さいし)を行ったり、封戸(ふこ)を寄進したほか、火山の神に対する叙位叙勲の行事があった。最初の噴火に対して従(じゅ)五位下が授けられ、噴火を繰り返すごとに位一級を進めるというものである。一方、火山への畏怖はそれへの敬称にも明らかである。浅間山(あさまやま)、蔵王山(ざおうさん)などの多くの火口が「御釜(おかま)」とよばれているほか、伊豆諸島では火山を「御山(おやま)」、火口を「ミホド」、噴火を「御神火(ごじんか)」、火山灰を「御灰(みはい)」などとよんでおり、利島(としま)では火口跡を神聖な場所として、不浄人や女人の立ち入りを禁じていた。また、青森県の恐山(おそれざん)のように、その荒涼とした火山性の景観が仏教の浄土末世観と結び付けられて、死者をめぐる民間信仰の霊場となっている所もある。アイヌにも火の起源と一体となった火山起源神話があり、英雄が天に昇って神から火をもらったとき、神が火と灰を下界に投げ降ろし、それが二つの山の山頂に落ち、どちらも火山となったとされる。
 一方、海外においても火山の神に対する信仰が存在している。ギリシア神話の火の神ヘファイストスは鍛冶(かじ)の神として崇拝されたが、本来は火山の神で小アジア地方からギリシアにきたものとされる。火山のヨーロッパ諸語volcano(英語)、volcan(フランス語)、Vulkan(ドイツ語)はイタリアの活火山島ブルカノVulcanoに由来するとされ、ヘファイストスと同一視されたボルカヌスVolcanusは同島やシチリア島のエトナ火山の下に鍛冶場の炉をもつとされた。火山の地下に鍛冶場をもつ巨人が存在するという神話はジャワ島南部にも存在している。またポリネシアの起源神話で英雄神に火を与えるマフイケも、地下に住んで火をもつ地震の神であり、その怒りが噴火となって現れるのだという。インドネシアでは火山の神にいけにえを捧(ささ)げる習俗があった。スラウェシ(セレベス)島北部のミナハサでは人身供犠(くぎ)が行われ、ジャワ島東部では人のかわりにヤギを供えていた。ハワイ諸島では、火山の女神ペレーの信仰があり、噴火はペレーの怒りの表現であるとされ、キラウエア火山の主火口は「ペレーの宮殿」、火山毛は「ペレーの毛」とよばれた。また、ペレーが北西端の島から南東端の島へと移住していったという伝説は、地学的な火山島生成の歴史と一致していて興味深い。北欧神話では、極熱世界と極寒世界が太初に存在し、両者があわさって、原初の巨魔族と神族が生まれたとされているが、それは、広大な氷原と多くの火山からなるアイスランド島の火山活動を表したものであろう。火山に関する神話や伝説は、他の神話、伝説と同様その歴史を刻印したものだといえよう。[上田紀行]
『町田洋著『火山灰は語る――火山と平野の自然史』(1977・蒼樹書房) ▽横山泉・荒牧重雄・中村一明編『岩波講座 地球科学7 火山』(1979・岩波書店) ▽諏訪彰編著『日本の火山活動――戦後36年の記録』(1982・共立出版) ▽守屋以智雄著『日本の火山地形』(1983・東京大学出版会) ▽荒牧重雄監修・著『火山の驚異』(1983・福武書店) ▽荒牧重雄・白尾元理・長岡正利編『空からみる日本の火山』『空からみる世界の火山』(1989、1995・丸善) ▽NHK取材班他著『火山列島日本』(1991・日本放送出版協会) ▽スザンナ・ヴァン・ローズ著、リリーフ・システムズ訳『ビジュアル博物館38 火山』(1993・同朋舎出版) ▽勝又護編『地震・火山の事典』(1993・東京堂出版) ▽兼岡一郎・井田喜明編『火山とマグマ』(1997・東京大学出版会) ▽宇井忠英編『火山噴火と災害』(1997・東京大学出版会) ▽東京大学地震研究所・鍵山恒臣編『マグマダイナミクスと火山噴火』(2003・朝倉書店) ▽産業技術総合研究所地質調査総合センター編『火山――噴火に挑む』(2004・丸善) ▽東京大学地震研究所監修、藤井敏嗣・纐纈一起編『地震・津波と火山の事典』(2008・丸善出版) ▽マウロ・ロッシ他著、日本火山の会訳『世界の火山百科図鑑』(2008・柊風舎) ▽下鶴大輔・荒牧重雄・井田喜明・中田節也編『火山の事典』第2版(2008・朝倉書店) ▽井田喜明・谷口宏充編『火山爆発に迫る――噴火メカニズムの解明と火山災害の軽減』(2009・東京大学出版会) ▽ハンス‐ウルリッヒ・シュミンケ著、隅田まり・西村裕一訳『火山学』(2010・古今書院) ▽守屋以智雄著『世界の火山地形』(2012・東京大学出版会) ▽久保寺章著『火山の科学』(NHKブックス) ▽伊藤和明著『火山――噴火と災害』(保育社・カラーブックス) ▽中村一明著『火山の話』(岩波新書) ▽日本火山学会編『Q&A 火山噴火――日本列島が火を噴いている!』(講談社・ブルーバックス) ▽伊藤和明著『地震と噴火の日本史』(岩波新書) ▽池谷浩著『火山災害――人と火山の共存をめざして』(中公新書) ▽鎌田浩毅著『火山噴火――予知と減災を考える』(岩波新書)』

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