地下のマグマからの水蒸気や地下水が熱せられて生じた水蒸気が、しだいに蓄積されて圧力を増し、ついに周囲の岩石を破壊し爆発する現象で、噴火の一種。マグマを出す普通の噴火(マグマ噴火)と異なり、既存の岩石や堆積(たいせき)物の破片だけを噴出する。水蒸気爆発では、細かい火山灰を含んだ黒色の噴煙が勢いよく火口から放出されるのが特色で、噴煙が横なぐりに地表をはうこともある。多くの噴火では活動の初期に水蒸気爆発がおこる傾向がある。
また、マグマ水蒸気爆発は、マグマ噴火と水蒸気爆発の中間的な噴火をさすこともあるが、元来は、マグマが地下水や海水と接触することによっておこるマグマ噴火のことである。この場合火口の周囲にタフリング(円形火口の周囲に高度の低い縁(ふち)をもつ火砕丘)やマール(水際に発達する円形火口で、その縁にほとんど堆積物を伴わないもの)が形成される。
1888年(明治21)の福島県磐梯山(ばんだいさん)の噴火災害(死者461人)は、水蒸気爆発の典型的な例である。1970年(昭和45)の秋田駒ヶ岳(こまがたけ)のように、有史以後は水蒸気爆発だけを繰り返してきた火山が、マグマ噴火をすることもある。
[諏訪 彰・中田節也]
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(井田喜明 東京大学名誉教授 / 2007年)
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…以上のような噴火は,マグマが地表に貫入し,マグマそのものが放出されるのでマグマ噴火という。一方,火山体の浅い所に地表水が浸透し,高温ガスや高温岩体に接触して水蒸気となり,その圧力が増大して火口部分を吹き飛ばして起こる噴火を水蒸気爆発という。この場合に放出される岩片は火山体を形成していた古い岩石で,新鮮なマグマは含まれていない。…
…この状態は爆風と呼ばれ,ここでは化学反応によるエネルギーの補給がないので爆風はしだいに減衰して最後には音波となる。 なお,物理的爆発の一つであるボイラーの爆発は,内圧の上昇によって容器の一部が破壊されたとき,圧力は一時解放されるが,その結果として過熱状態にある水が急速に平衡状態に戻ろうとして突沸するために起こる現象で,この形式の爆発は水蒸気爆発と総称される。そのほか,可燃性のガスや液体蒸気が開放大気中に放出され引火したときに起こる化学的爆発に蒸気雲爆発およびファイアボールがあるが,これらは本質的には可燃性混合気中の火炎伝播である。…
※「水蒸気爆発」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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