改訂新版 世界大百科事典 「ダラム報告」の意味・わかりやすい解説
ダラム報告 (ダラムほうこく)
Durham Report
1839年,ダラム伯ジョン・ジョージ・ラムトン(1792-1840)が,イギリス議会へ提出した《イギリス領北アメリカの情勢に関する報告書》(全2巻)の通称。1837年イギリス領北アメリカ植民地のアッパーおよびロワー・カナダでは,政治の民主化を求める反乱が勃発した。これには1820年代以来の改革要求という背景があり,とくにフランス系カナダ人の住むロワー・カナダでは,統治者のイギリス人に対する民族抗争の面も含んでいた。反乱鎮圧後の38年,イギリス当局はダラム伯を派遣して,その原因,結果,展望の調査に当たらせた。彼は両カナダにわずか6ヵ月滞在しただけでこの報告を執筆,植民地の自治,とくに責任政府の樹立と,両カナダ植民地を統合しフランス系カナダ人を同化することを勧告した。その結果,二つのカナダ植民地は41年連合された(連合カナダ植民地)。彼の《報告》はイギリス政治史における自由主義の真髄を示した古典として名高いが,フランス系カナダ人の怨讐の的となった。
執筆者:大原 祐子
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