改訂新版 世界大百科事典 「ダルタニャン」の意味・わかりやすい解説
ダルタニャン
D'Artagnan
フランスの作家デュマ(父)の小説三部作《三銃士》(1844),《二十年後》(1845),《ブラジュロンヌ子爵》(1848)の主人公。当初は三銃士を引き立てる脇役的人物であったが,ガスコーニュ生れの無類の快活さと素朴さと人の好さをもってひたすら猛進してゆくこの人物が,しだいに主役の座を占めるようになった。実在のダルタニャンは,ルイ13世とルイ14世の銃士隊長を務め,オランダのマーストリヒト包囲戦で戦死したモンテスキュー伯シャルル・ド・バ・カステルノー・ダルタニャン卿(1611?-73)であるが,デュマの手によって,勇敢でかつ寛容の心をもち,少々いなかっぽいが頭脳明敏なフランスの国民的英雄となり,大衆から空前の人気を得た。映画でも,ダグラス・フェアバンクス以来,多くの二枚目スターがダルタニャンを演じている。またフランス郵船会社は,両大戦間,横浜・神戸とマルセイユを結ぶ航路に,ダルタニャンをはじめ三銃士(アトス,ポルトス,アラミス)の名を冠した客船を配していた。
執筆者:高木 進
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報