改訂新版 世界大百科事典 「チャンスン」の意味・わかりやすい解説
チャンスン
Changsǔng
朝鮮の村里や寺院の入口に立っている木偶(あるいは石)の神像。漢字では長栍,長生,長承,将丞などと表記される。長生標ともいう。チャンスンは各地によって名称が色々で,コルマギ,スサルマギ(中部),ポクス(南部),ミルク(北西部),などとよばれ,風水説や仏教との関係がうかがえる。男女一対のものと単独のものがあり,一般に恐ろしい将軍の面相が彫刻してあり,男チャンスンには冠があるが女にはなく,胴体に天下大将軍,地下大(女)将軍と彫刻または墨書されている。チャンスンは里程標,境界標としての世俗的機能と,寺院や洞里の入口・両端・四方にあって外部からの災厄を防ぐ守護神としての宗教的機能とを併せ持っている。とくに村の入口や村内にあるものは村の守護神と考えられ,部落祭の重要な信仰対象となっている。チャンスンという名称は寺院と関係があるが,その起源は仏教文化渡来以前の朝鮮の古い立木,立石の民俗に由来する。チャンスンはソッテ(長竿の上部に鳥のついた神杆)が結合していることが多いが,このような刻木の男女神像と鳥杆の結合は北方のシベリアやモンゴルにもあるが,東南アジアにもあり,朝鮮のこの習俗は南北両文化の中間の環ともいうべきものである。
執筆者:依田 千百子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報