ちょっと古風な表現

ことわざを知る辞典の解説

ちょっと古風な表現

日本のことわざをみていくと、よく使われるもののなかにも、ちょっと古風な表現が目につきます。たとえば、「横好き」や「きちじつ」「ごう」「なまびょうほう」など、今日では、ことわざ以外では、めったに耳にしない語彙が出てきます。また、「」が外傷ではなく、失敗の意味で使われることもあります。そのほか、「きゅう猫を噛む」のような漢語調や「立つ鳥跡を濁さず」などの文語調がいまも残っていて、「好きこそものの上手なれ」の係り結びや「住めば都」の已然形など、古い語法も使われています。さらに、「背に腹はかえられない」や「牛に引かれてぜんこう参り」のように、表面的な意味はわかっても、全体としてどういうことなのか、すぐにはわかりにくいものもあります。このように古風な表現は、ことわざが現代の若者に敬遠される一因となっているのはたしかでしょう。

■なぜ、こうした古風な表現が、いまもことわざのなかに使われているのでしょうか。

■これには、さまざまな要因が絡んでいますが、まず文体の問題でいうと、漢文調や文語調は文を簡潔にし、ことわざを文章のなかで際立たせてくれます。これは、文語調のことわざを口語調にしてみると、よくわかるでしょう。「を追う者は一兎をも得ず」を「二匹の兎を追う者は一匹も得られない」とすると、わかりやすくなりますが、ことわざらしさは薄れてしまいます。「立つ鳥跡を濁さず」を「立つ鳥は跡を濁さない」としても、どうも締まりがなくなりますね。

■古い語彙や語法については、「のどもと過ぐれば熱さを忘る」が「喉元過ぎれば熱さを忘れる」になったように、現代風に改められることもあります。逆に古風なものがそのまま残っている場合は、長い間に不要な部分が削ぎ落とされ、洗練された結果、コアな部分がしっかりと根づいているといえ、じっくり味わうに値すると思ってよいでしょう。

■ことわざは、古くから伝えられたことばとして尊重されてきました。それは、単に古いからではなく、長い年月人びとが暮らしのなかで価値を確認してきたせいでしょう。古風な表現は、たしかになじみにくい面がありますが、発想を変えて、昔の人がどんなことを感じ、どんなふうに考えてきたか、実感することのできる入口ととらえ、積極的に扉を開いてみてはいかがでしょうか。

出典 ことわざを知る辞典ことわざを知る辞典について 情報

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