日本大百科全書(ニッポニカ) 「チーバー」の意味・わかりやすい解説
チーバー
ちーばー
John Cheever
(1912―1982)
アメリカの小説家。マサチューセッツ州クインシーに生まれる。私立名門校セイヤー・アカデミーに学ぶが、17歳のとき喫煙を理由に退学処分。処女作『放校処分を受けて』(『ニュー・リパブリック』誌1930年10月1日号)は、この体験をもとにしている。「アメリカのチェーホフ」とよばれ、長編小説より短編に優れている。おもに東部の郊外に住む中産階級の平和な生活を描きながら、背後に潜むグロテスクな人間の欲望、欠陥を浮かび上がらせる。兄フレッドとのかかわりは「シャム兄弟」のように愛憎なかばするが、兄弟の絆(きずな)(『さよなら、兄さん』――短編集『悪意のラジオ』所収・1953、『ファルコナー』1977)や家族の紐帯(ちゅうたい)から人間は逃れられないと信じていた。最後の作品『すばらしき楽園』(1982)の舞台も郊外で、「郊外生活の記録者」といわれた。雑誌『ニューヨーカー』に作品を数多く発表している。長編にはそのほか『ワップショット家の人びと』(1957)、『ブリットパーク』(1969)などがある。
[荒このみ]
『菊池光訳『ワップショット家の人びと』(1972・角川書店)』