アメリカ合衆国北東部、大西洋岸の州。独立13州の一つである。面積2万7335平方キロメートル(ランドエリア2万0306平方キロメートル)、人口634万9097(2000)。州都ボストン。北をバーモント州とニュー・ハンプシャー州に、西をニューヨーク州に、南をロード・アイランド州とコネティカット州に接し、南東は大西洋に面する。主要河川にコネティカット川、メリマック川、チャールズ川があり、州内には約1200の湖や池が点在する。最高峰はグレイロック山(1064メートル)。地形的には、西から南北方向に、バークシャー丘陵を軸とした山岳地域、沖積土のコネティカット谷、森林の多い中央台地、そして氷河作用を強く受けて複雑に湾入した東部の海岸平野に大別できる。とくに東部は、ボストン、グロースターなど数多くの良港を有し、工業化が進み、人口が集中する。自然景観と温暖な気候のコッド岬、マーサズ・ビンヤードMartha's Vineyard島、ナンタケット島などはニュー・イングランド地方随一の観光・行楽地として有名である。温暖湿潤気候を示し、平均気温は7月で23.3℃、1月で零下1.4℃で、冬が長い。東部海岸域に比べて西部山岳地は冬寒く積雪が多い。
合衆国の誕生から歴史的につねにリーダーの役割を果たしてきた同州は、人口密度がニュー・ジャージー、ロード・アイランドについで第3位であり、政治、経済、商工業、文化、教育の中心地として現在も重要な役割を果たす。また、合衆国有数の工業州で、州経済の25%を占め、就業者人口の26%が工業従事者であり、ボストン周辺、コネティカット谷、バークシャー谷に大規模な工業集積がある。近年はエレクトロニクス関連工業の進出が際だっているが、機械、衣料、皮革、金属、食品加工、ゴム、貴金属、印刷・出版など多様化が図られている。農業は、コネティカット谷を中心にタバコ、ジャガイモ、タマネギなど、主として市場向け野菜が栽培され、南東部とコッド岬付近はクランベリー栽培で有名である。中央部地域は牧畜・酪農農家が多い。漁業は以前ほどではないが、ニュー・ベッドフォード、グロースターを軸に州経済に重要な位置を占める。また、州都ボストンは独立前から合衆国の教育・文化の都として君臨しており、市内や近郊にはハーバード大学(1636創立)、マサチューセッツ工科大学(1861創立)など数多くの有名大学や教育研究施設、美術館、博物館、音楽ホールなど文化施設をそろえる。文化的活動もつねに活発で、多くの著名な文化人を輩出してきている。ニュー・イングランド地方独特の美しい自然景観と史跡に恵まれ、観光・行楽地には事欠かず、観光業も州の大きな財源である。主要都市は、ボストン、ウースター、スプリングフィールド、ニュー・ベッドフォード、ケンブリッジ、ブロックトン、フォール・リバーなどである。
[作野和世]
名称は先住民のマサチューセッツ人に由来する。ピューリタンの植民地として出発し、アメリカ独立革命では指導的役割を果たし、1788年合衆国憲法の批准と同時に連邦の一州となった。この間の歴史を三つの段階に分けてみていくことにする。
[富田虎男]
1629年にイギリス国王特許状を得たマサチューセッツ湾会社の株主のピューリタンたちは、翌1630年に約1000名の植民者とともに特許状を携えて入植を開始した。彼らは先住民の抵抗を排除してその土地を奪い、そこにタウンとよばれる自治的な村落共同体を基礎単位とする政治社会を築き、会衆派教会を中心とする神政政治体制を確立した。この体制に反対し政治と宗教の分離を唱える人々は、湾植民地から排除されて別個にロード・アイランド植民地とコネティカット植民地を建設した。湾植民地は自立化の方向に進んで、航海条令を骨子とする本国政府の重商主義政策と対立し、1684年には国王により特許状を取り消された。また1675~1676年にはメタカムを指導者とする先住民諸部族連合の強力な反撃を受けた。
[富田虎男]
1684年に王領植民地となり、1691年の新特許状のもとでメーンとプリマスを加えたマサチューセッツ植民地は、イギリス重商主義体制に組み込まれて、軍事上、貿易上重要な役割を果たしながら発展を遂げた。しかし1760年代以降、本国政府の統制政策の強化に反発して独立革命運動の先頭にたち、1774年には前年のボストン茶会事件に対する懲罰的措置に対抗して革命政府=植民地協議会を樹立した。
[富田虎男]
1775年4月にはレキシントンとコンコードで、6月にはバンカーヒルで農民義勇兵がイギリス軍と戦って独立戦争の口火を切った。1780年には邦憲法を制定したが、邦政府の政策に対する西部農民の不満は1786~1787年にシェイズの反乱となって爆発し、合衆国憲法制定の動きを促進することとなった。
[富田虎男]
アメリカ合衆国ニューイングランドの州。略称Mass.。独立13州の一つで,連邦加入1788年,6番目。面積2万306km2,人口654万7629(2010)。州都および最大都市ボストン。州名はピルグリム・ファーザーズが到来した地域に住んでいたアルゴンキン・インディアンの言葉で〈大きな丘のあるところ〉という意味。州全域にわたってアパラチア山脈に属する丘陵,台地が広がり,大小の湖が多く,南東部には巨大な砂嘴(さし)のコッド岬が大西洋へ突き出している。湿潤大陸性気候で,冬は雪が多い。第2次世界大戦前は繊維,造船などによって全米有数の工業州であったが,最近は高級繊維やエレクトロニクスが中心で,全米における工業の相対的地位は低くなりつつある。酪農や,クランベリー,タバコ,サトウカエデの産地として知られる。1620年にピルグリム・ファーザーズがプリマスに最初の恒久的植民集落をつくったところであり,現在にいたるまで,この州を合衆国,とくに北部の精神的祖国と感じる人々が少なくない。17世紀後半にはフレンチ・インディアン戦争が起こり,また本国イギリスとの摩擦も大きくなった。1773年にはボストン茶会事件,75年にはレキシントンにおいて独立革命で最初の血が流され,コンコードでも激戦があった。独立革命で重要な役割を果たし,19世紀にはアメリカの学術・文化の中核的地域ともなった。ボストン周辺にはアメリカ最古の大学であるハーバード大学,マサチューセッツ工科大学,ボストン大学のほか,多くの高等教育・研究機関が集中している。伝統的景観をとどめる町並みや史跡に富み,世界第一級の交響楽団がある。また,19世紀のニューイングランドの典型的な町を復元したオールド・スターブリッジ・ビレッジやプロビンスタウン・アーティスト・コロニーなど,多くの観光客をひきつけている。
執筆者:正井 泰夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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アメリカ合衆国を形成した最初の13州の一つ。1629年にピューリタンたちによって建設された植民地。1765年以後,イギリス本国の政策に反対する戦闘的指導者を輩出し,75年4月マサチューセッツ民兵はイギリス軍と衝突し独立戦争の口火を切った。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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