日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツェルター」の意味・わかりやすい解説
ツェルター
つぇるたー
Carl Friedrich Zelter
(1758―1832)
ドイツの作曲家、指揮者、音楽教育家。サンスーシ離宮を建てた石工の息子としてベルリンに生まれ、建築のかたわら音楽を学んだ。アマチュア合唱団ジングアカデミーに入団、1800年に師のファッシュが他界すると、その後任として指揮者に就任し、ベルリン音楽界の中心的存在として活躍した。メンデルスゾーン、ニコライ、レーベ、マイヤーベーアらの重要な弟子を育てた。29年、ジングアカデミーは、メンデルスゾーンの指揮で『マタイ受難曲』(1727)の復活上演を敢行し、バッハ復活の原動力となり、19世紀音楽史の画期的な一こまをつくった。ゲーテとの親交も厚く、往復書簡集がある。初期ベルリン・リート楽派の作曲家としてリート史に果たした役割も重要である。
[樋口隆一]